生体リズムと生活リズムをバランスよく整える【今井和子先生に聞く 乳幼児の生活習慣#4】

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専門家からのアドバイス 0・1・2歳児保育の大切さ 
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「子どもとことば研究会」代表

今井和子

生まれたばかりの赤ちゃんには、生活リズムというものがありません。家庭や園で生活する中で、成長しながらリズムを身につけていきます。

今回は、子どもの育ちの基本になる生活リズムの整え方について今井和子先生にうかがいました。

(この記事は、『新 幼児と保育』増刊『0・1・2歳児の保育』2022年春 に掲載されたものを元に再構成しました)

監修

今井和子先生
「子どもとことば研究会」代表。二十数年間公立保育園で保育者として勤務。その後、東京成徳大学教授、立教女学院短期大学教授などを歴任。現役保育者であったころからの経験をもとに、全国の保育研修なども行っている。著書に『0・1・2歳児の担任になったら読む本 育ちの理解と指導計画【改訂版】』『0歳児から5歳児 行動の意味とその対応』(ともに小学館)など。

3歳までに生活リズムが整うと、あとは自然に身につきます

子どもの育ちに必要な基本は、生活リズムが柱になります。乳幼児は、4〜5か月になると、体に備わっている体内時計がだんだん整ってきます。昼と夜の区別がつくようにもなるので、この時期に正しい生活リズムをつくることが重要です。

3歳ぐらいまでに整うと、あとはずっとこれが身についていくので、0・1・2歳児のうちに整えることが大切なのです。

太古の時代から、人間は朝、太陽の光で目覚め、夜になると眠くなるという生活をくり返してきました。これが私たちの体にもともと備わっている生体リズムです。しっかり食べて、ぐっすり眠り、目覚めたら機嫌よく遊ぶ、という生活を規則的にくり返すことで、生体リズムも整います。

ところが、昨今では、その生体リズムと生活リズムがアンバランスになっている子どもが増えているようです。これをバランスよく整えるために、保護者と密に話し合いながら、連携して進めていきます。一人ひとりの子どもの生活リズムを把握し、24時間の生活を通して整えていくことが大切です。

生活リズムを整えるにはまず睡眠を考える

現在は、大人型の生活に引き込まれてしまい、子どもたちが寝る時間が遅くなっています(2000年は夜10時以降に就寝する子どもの割合が3歳児で52%。*厚生労働省幼児健康度調査に基づく)。そのため、本来なら午前中は前頭前野が働いて快活になっている時間帯であり、子どもが最も機嫌がよいはずなのに、ぼんやりして、あんまり体を動かして遊ぼうとしない子をよく見かけます。

よく眠り、よく食べ、よく遊ぶ、これこそが子どもの基本といわれていますが、よく眠れていないため、イライラして怒りやすかったり、早寝早起きができていないので、おなかもあまりすかず、食事も進みません。朝から眠たがる子や、一度寝ると昼寝からなかなか目覚めない子などもいて、園での食事や昼寝の時間に支障が起きてきたりもしています。

人間が夜になると眠くなり、朝になると目覚めるのは、人間の体に備わっている体内時計の働きによるものです。しかし、地球の時間が1日24時間なのに対し、体内時計は約25時間といわれているため、体内時計のまま生活すると毎日1時間ずつずれていってしまいます。

私たちは、毎朝太陽の光を浴びることで、このズレをリセットしているのです。子どもが夜起きたときに部屋を明るくしていたり、昼間寝ているときに部屋を暗くしたりしていると、体内時計をリセットする能力が育たなくなり、昼夜逆転型になるので、注意したいものです。

睡眠は、体と脳を休め、その機能を維持させます。子どもの育ちとともに、1日の睡眠時間や睡眠リズムも変化しますが、それも脳の発達にともなって生じるものです。ですから、乳幼児期の睡眠不足や睡眠リズムの乱れは、この時期の子どもの心と体の発育・発達に、とても大きな影響を及ぼしかねません。生活リズムを整えるためにも、まずは睡眠リズムを整えましょう。

睡眠リズム|1・2歳児の場合

家庭と協力し合い24時間の生活リズムを把握する

園でも見直したい生活リズム

  1. 睡眠時間が長すぎていませんか
  2. 外で十分、遊んでいますか
  3. ごはんをおいしく食べていますか

生体リズムと生活リズムのバランスを整えるため、なんとか家庭で早寝早起きの生活リズムをつくり、整えていかないと、1日の生活がうまくいかなくなっていきます。園でももう一度、保護者と一緒にデイリープログラムを見直す必要があります。5〜6月ごろになると、個人面談をする園も多いかと思います。そのとき、一人ひとりの24時間の生活リズム表を作るとよいでしょう。

例えば、朝何時に目覚めるか、自律起床かどうか、そのあとどのぐらいで朝食をとるか、誰ととるか、排便はすませたかなど、細かく聞き取ります(面談のないところは、表に書き込んでもらいましょう)。また逆に、登園後のおやつの時間や、どのようにして遊んだか、何時ごろ昼寝したかなど、園での生活を細かく保護者に伝えるようにします。

また、早寝早起きのためには昼寝も重要になってきます。なるべく1時間半ぐらいにとどめて、夜早く寝られるように園でも努めます。寝る時間もなるべく早く設定し、14時半以降は寝ないで、(よほど疲れていない限りは)起こすようにします。そして、おやつを食べたあとは、戸外で遊ぶようにします。

戸外で遊ぶということが、実は生活リズムを整えるのに非常に重要です。外で遊ぶことが多ければ多いほど、それだけバッタンキューと寝てしまうものなのです。それが少ないと、家に帰ってから、夜もなかなか寝つけません。

昼寝を長くしないこと、なるべく外で遊ぶ時間を多くすること、ごはんをおいしく食べること、これが夜眠くなるために園でできる3大要素です。ごはんがおいしく食べられるのは、生活が安定し、安心できる人間関係を築けている証です。

いかにして、園と家庭で子どもたちの早寝早起きをつくっていけるか。保育者からこうしてください、と保護者に押しつけるのは御法度。まずは園で改善できることを実行し、それから保護者にも協力してもらいましょう。家庭と連携しないと、生活リズムは整えられません。

保護者と一緒につくる24時間の生活リズム表

はるお( 1 歳10か月)
両親とはるおくんの3人家族の場合

リズム表をつくるときに聞いておきたい質問事項

  1. a 自分で目を覚まし起きてきますか?(自律起床)
    b 親に起こされて起きますか?(他律起床)
  2. a 家族と一緒に食べますか?(誰と朝食をとるか)
    b 子どもだけで食べますか?
    c テレビはついていますか?
    A)目覚めてから朝食までの間、どのように過ごしていますか?
    * テレビを見ている場合は、何を見ているか番組について聞いてみる。
  3. 誰と一緒にどのような手段で登園しますか?
  4. 天気のよい日は主に散歩、もしくは園庭で遊ぶことを保護者に伝える。
  5. 食具を持ってひとりで食べる”“食欲があっていいですね”など、一人ひとりの子どもの食事の様子を伝える。
  6. 午睡。眠る前に本を読むこと、眠るときは保育者が子守唄を歌って子どもたちを寝かせること、目覚めがよいか否かなど、一人ひとりの様子を伝える。
    B)天気がよい日などは、午後のお散歩を楽しむこともある。室内ではどのような遊びを好んでしているか、遊びの様子を伝える。
  7. 帰宅後の生活の様子を聞く。
    保護者が夕食の支度をする間、子どもは何をしているか?
    テレビやDVD を見ている時は、その番組または題名を聞く。
  8. a 誰と一緒に夕食を食べていますか?
    b テレビをつけて夕食を食べていますか?
    c 食事のことで何か困っていることはありませんか?
    C)夕食から入浴までどのように過ごしていますか?
  9. お風呂は誰と一緒に入りますか?
  10. ひとりで寝ていますか? 添い寝ですか?
    布団に入ってどれぐらいで寝つきますか?
    * 1日の睡眠時間を把握しておく。

ポイント1

はるおくんの場合、夜の睡眠は8時間半、園の午睡が1時間半で合計10 時間。睡眠時間が2時間ぐらい少ないことに保護者に気づいてもらう。もう少し早く床につくことはできないか? まずは、30分でも早く寝るようにするためにはどうしたらよいか、一緒に考えてみる。

ポイント2

1 日のテレビ、DVD などの視聴時間が朝30分、帰宅後30分、夕食を食べながら30分、夕食後親と一緒に30分~1時間ぐらい、合計で2時間~2時間半と多すぎないか? 夕食時のテレビを消すとか、夕食後の親子の過ごし方について考えてみるなど、検討できないか一緒に話し合う。

生活リズムにづくりに役立つコラム集

生活リズムを整えるためには睡眠不足や睡眠リズムの乱れは大敵です!”寝る子は育つ“という言葉のように、睡眠には脳をつくり育てる働きがあります。まずは、家庭&園での睡眠を見直し、保護者と連携しながらいいリズムをつくっていきましょう。

早く寝るための3か条

早く寝られるようにするために、3つのことをすすめていきましょう。

  1. 入浴時間を決める。入浴で体温が上がり、その後下がるときが生理的に眠くなるチャンスです。入浴時間を寝る時間から逆算して決めるのも一案です。
  2. 照明を暗くする。日が沈んで暗くなると眠くなる、という生体リズムにしたがって生活している子どもにとって、いつまでも明かりがこうこうとついていると寝つけないことが多いのです。明かりを暗くして眠りに導きましょう。
  3. 就寝30分前にはテレビ、DVDは消す。子どもにはこれから寝るんだな、と感じられる雰囲気が必要です。寝る直前までテレビなどを見ていると、強い光の刺激を受け、興奮してなかなか寝つけません。寝る前は騒がしい音を消し、気持ちを落ち着かせましょう。

寝るのをイヤがるときの対処法

寝るのをイヤがるときは、まず「何でイヤなのか?」考えてみましょう。「パパに会いたい」「もっと遊びたい」「眠くない」など、その理由を受けとめてあげましょう。受けとめたうえで、気持ちよく眠るために、添い寝をしたり、絵本を読んだり、子守唄を歌ったり、子どもに何をしてほしいか選んでもらい、親子でスキンシップとリラックスを楽しみましょう。

お昼寝のときに音楽をかける園もありますが、それよりも、信頼している先生の声で子守唄を歌って聞かせてあげたほうが、子どもは安心して眠りにつくことができます。また、夜、パパをどうしても待ちたい場合は、パパに寝かしつけてもらうのも手です。パパとひと遊びしてしまうと興奮して目がさえてしまいますから、注意しましょう。

気持ちよく目覚めるためには

眠りの浅いレム睡眠のときは、眠っていても音が聞こえています。大音量の目覚まし時計で強制的に起こすのではなく、やさしいメロディーの音楽を流したり、やさしく声かけして、自然に目が覚めるように促します。人に起こされるのではなく、自律起床(自分自身で目覚めること)することが大事なのです。

うっすら目が覚めてきたら、無理やり体を起こしたり、ゆすったりせず、カーテンを開けて太陽の光を室内に取り入れましょう。朝日を浴びることで、自然と目覚めが促されます。

午前寝する保育園も増えてます

午後の活動を充実させるために、最近は昼寝(午睡)を午前中に設定する園も増えてきています。午前中のおやつを食べ、遊んだあと、11時〜12時ごろに寝ます。この時間は大脳の働きがやや低下しているので、寝つきやすく、深い睡眠にならないので、目覚めの気分がいいのも特徴のようです。しかも、午後寝ないことでおやつの時間が早くなり、夕飯への影響が低くなります。

また、午後からの遊びがはつらつとし、それだけよく遊ぶので、家に帰ってから夜寝る時間が早くなることが利点です。試してみてはいかがでしょうか。


文/大石裕美 イラスト/奥まほみ
撮影/藤田修平 撮影協力/小学館アカデミーあらいやくし保育園

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