こだわりが強い子とのかかわり方のヒント【保育に取り入れられる「療育」のテクニック #2】

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こだわりの強さは友達とのトラブルの原因になることもあり、園では「困った行動」と受けとめられることが多いでしょう。でもだからといって、叱って従わせたり強引にやめさせたりするのは逆効果です。自分の気持ちが受け入れられることがわかると、自然に他人の気持ちに応えることもできるようになっていきます。

お話/桑野恵介 先生

株式会社スペクトラムライフ代表。臨床心理士、ESDM 認定セラピスト。埼玉県の入間市児童発達支援センターうぃずの受託事業者。2019年埼玉県立上尾特別支援学校特別非常勤講師、東京大学高度医療人材養成プログラム「職域・地域架橋型・価値に基づく支援者育成」講師。

協力/株式会社スペクトラムライフ早期教育すれい(埼玉・所沢市)

楽しい経験が行動を変えるきっかけに

「早期教育すれい」では、「ESDM(※)」をベースとした療育を行っています。3歳ごろからは就学後の生活を意識した課題も取り入れていきますが、0〜2歳児は自由遊びが中心です。療育担当者との遊びの中で「よい経験」を重ねることで、それぞれの課題の改善・解決につなげていくのが狙いです。

園などでの「困った行動」の多くは、他人との適切なかかわり方がわからないことが原因です。そして、人とのかかわり方を学ぶうえで役立つのは、「〜しなさい」「〜するべき」と教えることではありません。「だれかと一緒に楽しく遊ぶ」経験なのです。園でも、まずは子どもを楽しませることを心がけてください。

自由遊びは、原則として子ども主導で行います。その中で、ときには大人の側から別の遊びに誘ってみましょう。子どもが興味を示さない場合は、そのままスルー。誘いに乗ってくるようになったら、少しずつ提案を増やしてみます。

ここで忘れてはいけないのが、「大人の指示に従わせる」のが目標ではないということです。ゴールは、子どもと「フィフティー・フィフティー」な遊びの時間を持てるようになること。相手に譲ることもできるけれど自己主張もできる、という関係づくりが大切なのです。

誘うときには、無理強いしないように注意します。子どもがしたいことを中断させたり、興味を持てないことにしつこく誘ったりするのは逆効果。子どもには、「大人のいうことを聞きなさい!」というメッセージとして伝わってしまいます。

遊びを通したかかわりで最も重要なのは、子どもを楽しませることです。「一緒に遊んだら楽しかった、いいことがあった」と思えることが、行動の変化につながっていくのです。

※ESDMとは:Early Start Denver Modelの略。自閉スペクトラム症などの発達障がいがある子ども向けの超早期介入指導プログラム。

かかわり方の実例

Aくん(2歳4か月)
帽子など肌にものが触れる刺激や大きな音に敏感で、気に入ったものへのこだわりが強い。指さしや発語がなく、目を合わせたり人のまねをしたりすることも苦手。

かかわり方のアイデア1 子どもの行動のまねをする

子どもの行動を言葉に置き換えた「ナレーション」をつけながら、保育者が同じ行動をしてみせます。

「自分が動くと相手も動く」という発見が遊びを楽しくし、相手に注目することにもつながっていく。

かかわり方のアイデア2 視線を合わせる工夫

顔を上げたとき自然に視線が合うように、遊ぶときは子どもの正面が定位置です。

ときにはあえて正面以外のところに位置取りし、声をかけて注意をひいてみる。

名前を呼んで注意をひき、おもちゃなどを保育者の顔に近づけて視線を合わせる。

かかわり方のアイデア3 子どもがやりたいことを止めない

遊びは子ども主導が基本。危険なこと以外は止めずに見守り、工夫しながら遊びを続けましょう。

ボール遊びをしているときに、ボールプールの中に別のおもちゃを入れてしまう。

× おもちゃを入れちゃダメだよ
子どものしたいことを止める=大人の指示に従わせようとすること。

〇 「ボール」をカゴに入れる遊び」から、「ボールの中のおもちゃ探し」に遊びを変更。

おもちゃをボールの中に隠しながら、探すふりをする。

子どもがまねをして探し始める。

かかわり方のアイデア4 「要求」を引き出す

遊びをくり返すときは、子どもの意志を確認してからにします。言葉を引き出すため、「要求のしかた」のモデルを示します。

「やりたい」のサイン(Aくんの場合は手にタッチ)を確認してから、もう1回。保育者がくり返し言葉にしてみせることで、Aくんに「要求のしかた」を伝える。

かかわり方のアイデア5 「選ぶ」ことでモチベーションアップ

同じタイプのおもちゃが複数あるときは、ふたつ見せて子ども自身に好きなほうを選ばせます。

選択することで、「これで遊びたい!」という気持ちが高まります。

かかわり方のアイデア6 「楽しんでいるときに少し違う刺激をプラス

「楽しさ」の中でいろいろな刺激を経験することで、苦手な感覚(※)も受け入れられるようになる場合があります。

※Aくんの場合は触覚への刺激。

トランポリンの上でボール遊びをしているとき、表面を軽くたたいて揺らす。

ボールプールで遊んでいるとき、追加のボールをAくんの近くに流し入れる。

<注意>
・嫌がる様子が見られたらすぐにやめる。
・ 必ず、子どもが楽しんでいるときに。

かかわり方のアイデア7 特定の刺激(※)に集中する場面をつくる

※Aくんの場合は触覚への刺激。

中が見えないようにした箱にAくんが好きなおもちゃをいくつか入れておき、手探りで好きなものを選ばせます。

保育者が先にやってみせると、「中にいいものが入っている」ことが伝わる。

触覚だけに意識を集中することになるため、脳で刺激を処理する能力アップにつながる。

気になる刺激があっても、箱の中からお気に入りのおもちゃが出てくることで「うれしい」「もっとやりたい」という気持ちに。

かかわり方のアイデア8 遊びを展開させていく

同じ電車のおもちゃでも、途中で速度を変える、歌いながら引っぱるなどの工夫をすることで楽しみが広がります。

保育者のかけ声で右手を上へ。子どもがまねしたくなるよう、大きく楽しそうに動く。

保育者が歌いながら電車を走らせる。スピードを上げたり下げたりする。

遊びをアレンジすることで飽きずに楽しめ、いろいろな刺激を体験することにもつながる。

かかわり方のアイデア9 大人の側から遊びに誘う

大人から誘う場面をつくることも意識します。最終目標は子どもと「フィフティー・フィフティー」の関係をつくること!

自分の動作にナレーションをつけながら、保育者が新しい遊びをやってみせる。

子どもがまねをしたら、そのまま遊びを続ける。

<注意>
興味を示さないときは無理強いせず、子どもがやりたがる遊びに切り替える。

「発想の引き出し」を増やしていく

帽子をかぶるのを嫌がる子に「帽子をかぶる練習」をさせるのは、よい方法ではありません。たとえ短時間でも嫌なことを無理強いされるのは、子どもにとってつらい経験だからです。

こんなときはまず、なぜ帽子をかぶりたがらないのか?を考えてみてください。Aくんのように、触覚への刺激に敏感なことが原因と思われるなら、まずは楽しい遊びの中でいろいろな刺激を経験させることから始めましょう。ひとつの方法にこだわらず、嫌がるときは別の方法に切り替えるのが正解。そのためにも、遊びをどんどん展開させていけるよう、頭を柔らかくしておくことを心がけてください。

まとめ】
一緒に遊ぶときは、保育者も楽しんで! 一番大切なのは、子どもが「だれかとかかわると、お互いに楽しいんだ!」と思えることです。


文/野口久美子
イラスト/河合美波

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