柴田愛子先生×大豆生田啓友先生対談「保育にICTって必要? 不要?」

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りんごの木子どもクラブ代表

柴田愛子

玉川大学教授

大豆生田啓友

話し始めたら止まらない愛子先生とマメ先生の保育・スペシャル対談。

ここでは『新 幼児と保育』2024年春号に掲載の「柴田愛子先生×大豆生田啓友先生 春の特別対談 保育の『ヘンな文化』そのままでいいんですか!?」で紹介した対話の続きを公開。

話題は、保育における「折り紙」の話から「ICT(情報通信技術)」の話へ。これからの保育にICTをどう使う? どう生かす?

★柴田愛子先生と大豆生田啓友先生の対談集(小学館刊)が、9月中旬発売予定です。お楽しみに!

ICT時代になって、遊びを伝承する方法も変わってきた⁉

『新 幼児と保育』2024年春号より一部引用)

柴田 ひとりの女の子がシロクマの折り紙を持ってたの。「あなた作ったの?」って聞くと「そうそう」って。上手だねっていうと、「あのね、YouTubeでね、すみっこぐらし、しろくま、かんたん、おりがみってやってみ。かんたんを入れないとダメなんだよ」って教えてくれてね(笑)。わかったって言ってやってみたんだけど。そのYouTubeが上手なのよ、教え方が! そういうふうに、時代って流れていくと伝承する方法が変わってきたりするじゃない? そういうのはどう思う?

大豆生田 ぼくは、ICT(情報通信技術)は両面と思っていて、子どもたちの生活の中にはもうすでに織り込まれているので、それを豊かに活用できるっていうこと自体は否定しない。けれど、そのICTが入ることで教え合いの文化がうまくいかない場合もあるとするならば、そういうところは、そこにいる大人がどうコントロールしていくかっていう部分はあるなと思っていて。

柴田 なるほどね、そうよね。

大豆生田 もちろん、スマホやタブレットを見ながらでも教えたりはできるんだけど、手を取り、だれかが教えるっていうのがなくなっちゃったら、そこは惜しいんじゃないですか? 「〇〇ちゃん、すげえ!」って言ってもらえる関係だったりとか。

柴田 そうよね~。 (ここまで『新 幼児と保育』2024年春号より一部引用)

「排除」ではなく、ICTを豊かに生かす方法を考えたい

柴田 あのね、とことん週間(※自分がやりたいことを、同じ思いの仲間とともに1週間とことんやるという活動)のときに「ステージ」っていうテーマでやったグループがあって、その子たちはダンスをするのね。でも、グループについた、あゆちゃん(保育者)は知らないダンスなのよね。

そしたらね、子どもたちがあゆちゃんに「スマホ貸して」って言って、YouTubeでダンスを見てみんなで一生懸命練習してたのよ。私たちの世代だったらそんなことはやらないって思ったけど、子どもたちは朝早くから集まったりして、大人はおまけみたいな感じでことが進んでいってね。

そのうち「親に見せようよ」「親に見せたい」ってなったんだけど、グループの中で舞台の装置や照明なんかを全部見ている舞台監督みたいな男の子がいてね、その子が親を呼ぶのはイヤだって言ったの。「ぼくはお母さんが来るならやらないから」ってなっちゃった。で、それを解決したのがまたこれ(ICT)でね。

大豆生田 へえ~!

柴田 「じゃあ、来たい親は来たらいいじゃん。まあちゃんはイヤなんだから、まあちゃんのお母さんにはYouTubeで見せようよ」って。

大豆生田 ハハハ(笑)。それならいいだろうって?

柴田 そう!

大豆生田 使い方が上手じゃないですか。

柴田 ですよね。それで、ほかの人は従来どおり、お父さんお母さんがチケットを持って見に来てね、「どの席がいいですか」なんてやっているんだけど、まあちゃんのおうちではYouTubeが流れてるのよね(笑)。そのときに、やっぱり若い保育者だと新しい形が出てくるなと思ったの。

大豆生田 そうですよね。

柴田 でね、そこでちょっと素敵だったのは、子どもたちがそうやって自分たちでどんどんやってる姿を見て、あゆちゃんは「私だけがなにもできないまま」って言ったの。「子どもはこうやって日々燃えてやっているのに、私だけがなにもできていない」って。「だから私も何かに挑戦したい」って言い出して、彼女はピアノがあまり得意じゃないから、「私はピアノをがんばる!」ってね。子どもの歌に合わせて練習して、そのあゆちゃんに子どもたちが「大丈夫だよ、今日は間違いが1回だけだったからね」って(笑)。

大豆生田 いいですね~(笑)。

柴田 親を呼んだときも「あゆ、がんばるんだよ!」「うん!」なんて励まされていてね。大人とか子どもじゃなくて同列になって、そこがあゆちゃんの良さかなと思ったんだけどね。私にはわからないような新しいものが入り込んでいて、それに子どもは平気でなじんでいく。

大豆生田 「ICT使うなんて」みたいな排除論もあるけれど、やっぱり子どもたちの生活には、もうそれが入り込んでいるわけだし、若い世代にもそれが当たり前で。否定から入るのはもったいないなって思いますよね。なるべく「ねば」とか「べき」をつくらずに、どこでこのICTが生かされるのか、もちろん身体性=体を伴うことが大事だったり、対話コミュニケーションがあることが大事だったりするので、そこがICTによって阻害されてないか、みたいなことをちゃんと追うことが必要。この事例はICTを使ったことで、むしろ豊かな参加の仕方が生まれてきているわけですよね。

柴田 そうなんですよね。それでね、私もうひとつびっくりしたのは、そういう保育を展開していくときに、あゆちゃんが「YouTubeを使ってもいいですか」って私にひと言も聞かなかったこと!

大豆生田 ハハハハ!!(笑)。そもそも、聞かないとしちゃいけないと思っていないところがいいと思います。

柴田 そうですよね。

大豆生田 若手がこうしてみたい、ああしてみたいということを、上に聞かなくてもある程度やれちゃう。もちろん聞いたほうがいいこともあるんだけど、それができちゃうっていうことって、やっぱりすごく大事ですよね。

柴田 どうして、あんなふうに堂々と言えるかと思うぐらいですよね(笑)。

柴田大豆生田 (笑)!

撮影/五十嵐美弥(小学館)

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