年度はじめの子ども・保護者が安心する わが園のウエルカムアイテム&アイデア
年度のはじまり。新入園の子どもと保護者、進級で環境が変わった子どもたちは不安でいっぱい。いち早く園生活に親しんでもらえるように各園ではさまざまな工夫をしています。保護者に向けて、子どもに向けてウエルカムを伝える実例を紹介します。
目次
保護者と子どもに向けて
園スタッフの顔と名前を知ってもらう、覚えてもらう。園の雰囲気を伝える職員紹介
わが子とかかかわる大人がどんな人なのかは、保護者にとっては最も気になることのひとつ。できるだけ早く、名前と顔を知ってもらおうと、多くの園では顔写真入りの「職員紹介」を掲示していました。
貼り出すのは、おもに送迎のときなどに目にとまりやすい玄関近く。子どもたちが保育者の顔を覚えたころには、保護者と子どもの会話のきっかけにもなっているようです。
職員紹介ボード、見せてください!
手作りの職員紹介は、園の雰囲気を伝えるのにもひと役かっています。つけ替えができるようにしておくと、年度ごとのリニューアルも簡単。
保育者それぞれの思いを1枚のカードに
- 保育において大切なのは「人」。職員紹介カードには、写真とともに、それぞれの保育者の「保育園で働くうえでの意気込み」を書いています。保護者からは、「人となりがわかっていいですね」「預かってくれる先生の思いが見られてうれしい」という声をいただきました。職員同士も、「この先生はこういう保育をしたいんだ」ということがわかり、少し距離が縮まるように思います。
(こどもの王国保育園/東京・豊島区)
クラスの担当保育者がひと目でわかる
- 担任の顔写真のついた職員紹介はバッジ式にしていて、年度ごとに移し替えができます。クラスと担任は毎年4月の初登園の朝に発表となるので、新入園はもちろん、在園の保護者もドキドキしながら玄関に入るようです。乳児の子も担任の顔を覚えてからは、見つけると指さして見ています。
(あかね保育園/埼玉・所沢市)
台紙も楽しく飾りのひとつに
- 全職員の顔写真をクラス別に紙に貼り、園舎をイメージした台紙に貼っています。新年度には、顔写真を貼った紙を入れ替えて、ほかの掲示物とのバランスを考えながら位置を決めています。保護者とはもちろん、行事のときなどにはおじいちゃんやおばあちゃんとの会話のきっかけにもなっているようです。
(ピノキオ保育園/京都・京都市)
名札は見やすく! 大きく!
- 名前を覚えてもらうために、職員はフェルトで作ったどんぐり形の名札をつけています。帽子と実がセパレートになっていて、クラス名と職員名の組み合わせを変えることができます。
(しいの実保育園/東京・豊島区)
- 職員の名札は、子どもや保護者によくわかるように大きめのものをつけています。その職員がどのクラスにいるのかもわかるように、顔写真を一覧にした職員紹介ボードを飾っています。連絡ノートの署名を見て、どの職員が書いたのだろうと確認したり、子どもから聞いた名前と顔を一致させるなど、保護者はよく見てくれているようです。
(旭保育園/東京・板橋区)
子どもに向けて
新しい環境に戸惑う子どもの心を癒やす、励ますアイテム
保護者とはなれて新しい環境で生活をする子どもたち。その不安に寄り添い、支えていくうえで、意外なアイテムが役に立っていました。それぞれの園の「心を癒やす」「心を励ます」ものを教えてもらいました。
さびしいときの特効薬「家族の写真」
入園の際に家族写真を2枚提出してもらい、1枚は保育室に貼り、もう1枚は職員の顔写真も含めた冊子を作って保育室に置いています。慣らし保育のときに、保護者を思い出して泣く姿がありますが、写真を見ながら「ママだね」「パパだね」と話すと気持ちが落ち着くことがあります。家族写真を抱き締めながらお迎えを待っている子もいました。
少し落ち着いてきたころには、冊子をめくって友達の名前を呼んだり、保育者の名前を呼んだりしています。乳児も幼児も「これはだれだ?」と少し隠してクイズにすると大喜びで答えてくれます。年度はじめに写真をもらっているので、年度末に近づいてくると、写真の顔は別人のよう。
みんなで見ながら「大きくなったね」とふりかえることもできます。
(こどもの王国保育園/東京・豊島区)
ほっと落ち着く小さな「木の部屋」
身を隠せるすきま、すみっこは、子どもたち自身が気持ちを落ち着かせるための大切な場所。職員の発案で作った「木の部屋」は、ふたのないお風呂のような簡単なつくりですが、子どもたちはただ入っていたり、玩具を持ち込んだりして自分だけのの空間を楽しんでいるようです。大工さんに頼んで6個作ってもらいました。年齢が上になると、部屋を連結させておうちごっこをするなど、見立て遊びの材料にもなっています。
(えがおのはなさくみんなのほいくえん/宮城・加美町)
登園する子どもを励ますこいのぼりと、飼育動物
毎年4月1日に、どこよりも早くこいのぼりと武者のぼりをあげています。最近は大きなこいのぼりをあげる家庭はほとんどなく、子どもたちはこれを楽しみに登園するようです。4月は、新入園児だけでなく、進級した子も心が揺れる時期。その心を支えて、自分で自分のスイッチを入れるきっかけをくれるのは、こうしたこいのぼりや飼育動物(うざぎ、カメなど)の力が大きいと感じます。バサバサと音をたてて空を泳ぐこいのぼりに励まされ、うさぎやカメに慰められ、子どもたちは園での生活に慣れていきます。
(あいの保育園/青森・青森市)
笑顔になるモビール&ウクレレの音
0歳児は月齢によって遊べるもの、興味を持つものがさまざまなので、反応を見ながら環境づくりをしてきました。低月齢の子どものお気に入りは天井からぶら下がるモビール。ゆらゆら揺れる様子に泣いている子も興味津々、笑顔になる魔法のアイテムでした。
わが園では歌ったり踊ったりして遊ぶ際にウクレレを使っていますが、
このウクレレも新入園の子どもには、興味津々アイテム。保育者がウクレ
レを弾きながらゆったりのんびり歌を歌うと、初めて聞く音に興味を持っ
て見つめたり、身体を揺らして楽しんでいる姿も見られます。
(えがおのはなさくみんなのほいくえん/宮城・加美町)
保護者に向けて
園の様子を知ってもらう工夫で保護者の不安を和らげる
保護者にとって、気になるのは園でのわが子の様子やこの先の園生活、園を中心にしたコミュニティーのこと。そんな不安をいち早く和らげるために、各園で行っていること、取り組んでいる工夫を教えてもらいました。
前年の活動記録ポートフォリオを掲示
玄関には、新入園児の親子写真紹介のほかに、前年度の活動をまとめたフォトブック、ポートフォリオを掲示して、自由に見てもらえるようにしています。園での1年の生活と成長に見通しを持てることのほかに、これらを介して保護者同士の会話も広がっているようです。
この先、子ども同士はもちろん、保護者同士も育ち合う仲間。ひとつの「出会いの場」として、玄関をプロデュースできたらいいなと思っています。
(あいの保育園/ 青森・青森市)
離乳食、日々の生活、行事記録を写真集にして紹介
保護者が見通しを持てるようにと、0歳児離乳食の進め方を写真集で紹介しています。初期・中期・後期の献立を写真で見せることで、きざみ方や量もわかりやすいといっていただいています。
保育園での生活、行事なども写真集にして残していて、入園の際に紹介します。この写真集は職員間の共有資料にもなっていて、次年度の取り組みへの伝承、検討材料にもなっています。
(めぐみ第二保育園/東京・府中市)
子どもの様子を伝える日々のできごとモニター
園での子どもたちの様子を保護者に伝えたいと、玄関にはモニターを設置。行事活動などのほか、「この瞬間を伝えい」と思うとき、活動の様子をとらえた写真をスライドショーにして流しています。文章を入れているので活動内容も伝えやすく、送迎のときにはモニターを見ながら、親子で会話している様子が見られます。
(旭保育園/東京・板橋区)
子ども、保護者、保育者の親睦遠足
園児、保護者、職員で、楽しみながら親睦を図ろうと、年度はじめの4月の第3日曜日に、近くの動物公園に遠足に出かけます。兄弟、祖父母の参加も大歓迎の行事です。
当日はクラスごとに園内を見学したあと、お弁当を食べて解散。その後は、職員が事前に配布した「見どころ便り」を手がかりに家族で見学。このとき家族同士の交流が生まれるようで、5月の懇談会のころには、保護者同士が打ち解けて会話を交わす姿が見られます。
(めぐみ第二保育園/東京・府中市)
懇談会と離乳食バイキング
4月中旬に行う0歳児クラスの懇談会では、1年間の見通しを話したあと、栄養士と調理師も参加して離乳食の試食会をしています。準備期から完了、移行食など全パターンを用意してバイキング形式でおしゃべりしながら試食し、形態や味つけなどを見てもらいます。子どもに合わせたさまざまな食器類なども実物を用意してあり、保護者は興味津々で質問をしてくれます。
(しいの実保育園/東京・豊島区)
初めての登園日は親子で一緒に
園生活がどのようなものか、体験してもらうことで不安を取り除いてもらおうと、最初の登園日には保護者にも子どもと一緒に過ごしてもらっています。子どもは保護者がいることで安心して新しい環境と出会い、保護者同士も顔合わせができて、そこで交流も生まれているようです。
(えがおのはなさくみんなのほいくえん/宮城・加美町)
構成/木村里恵子
編集協力/子どもの文化研究所(鈴木孝子、菊地広子)
『新 幼児と保育 増刊』2020年春号より
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