3ステップで備える「子どもの健康早わかりシート」~熱性けいれん&中耳炎~

連載
園で気になる子どもの病気

子どもに起こりがちな体調トラブルに直面したときの対処法を、3ステップでわかりやすく指南。今回は「熱性けいれん」と「中耳炎」を紹介。初期の段階で症状に気付くことで、悪化を未然に防ぎます。

監修

澁谷紀子 先生

総合母子保健センター愛育クリニック 院長兼母子保健科部長。小児科専門医、アレルギー専門医。東京大学医学部卒業。東大病院、山王病院、NTT東日本関東病院小児科などを経て現職。4人の女の子の母でもある。

熱性けいれん・てんかん

子どもは発熱した際にけいれんを起こすことがありますが、数分で治まることがほとんどです。

step1.おもな症状と原因

熱が急に上がるときにけいれんを起こす

「熱性けいれん」は、発熱(熱の上がり始めに多い)に伴って起こるもので、突然体をこわばらせ、呼びかけにも答えられなくなります。歯を食いしばって息を止め、手足をガクガクとふるわせたり白目をむいたりすることもあります。

子どもの脳神経は未熟なため、発熱による刺激で興奮しやすいことが原因と考えられています。一生に一度しか起こさないことが多く、5歳以上の子にはほとんど見られません。

step2.治療の基本

落ち着いて様子を見守り、治まったら受診する

単純な熱性けいれんは、数分で自然に治まります。あわてず、下のように対応しましょう。けいれんが治まったら、かかりつけの小児科を受診します。診療時間外の場合は、小児救急電話相談(#8000)に電話を。症状を伝えると、医師や看護師から対処法などのアドバイスを受けることができます。

けいれんが5分以上続く、体のふるえが左右対称ではない、けいれんが治まっても意識が戻らないなどの場合は、すぐに受診が必要です。救急車を呼んで構いません。

熱性けいれんを起こしたら

あわてずに見守る
けいれんの始まりと終わりの時刻を確認し、記録する。症状が激しくても、落ち着いて経過を見守る。
→ 体のふるえは左右対称か、目の動きに異常はないかなど。

服をゆるめる
呼吸を妨げないよう、のどもとのボタンなどを外す。

楽な姿勢をとらせる
おう吐することもあるので、できれば顔を横向きに。

症状が治まったら受診
けいれんが治まったら熱を測って記録し、病院へ。(※診療時間外の場合は#8000へ電話を)

×してはいけないこと
・大声を出す ・体をゆさぶる ・口にものを入れる

こんな時は救急車で病院へ!

・けいれんが5分以上続く
・体のふるえが左右非対称
・けいれんが治まっても意識が
 戻らない

step3.てんかんが疑われる場合

けいれんをくり返す場合などには脳波の検査を

発熱していないのにけいれんを起こす、体の一部だけがふるえる、発熱時のけいれんを何度もくり返すといった場合、てんかんの可能性を見極めるために脳波の検査を行うことがあります。これまでの経過を具体的にメモしたものを持参すると、診断に役立ちます。

てんかんと診断された場合は、日ごろの体調管理に気を配ります。処方された薬を正しく服用し、発作を誘発する疲労や睡眠不足を防ぎましょう。

急性中耳炎・滲出しんしゅつ性中耳炎

中耳炎には、耳の痛みや発熱が見られるものと、聞こえが悪くなるものの2種類があります。

step1.おもな症状と原因

急性中耳炎はかぜのあとに多く見られる

かぜのあとなどに多く見られる急性中耳炎は、鼓膜の内側の中耳に炎症が起こるもの。のどや鼻に感染したウイルスが「耳管」を通って中耳に入り込むために起こります。おもな症状は、高熱と耳の痛み。黄色っぽい「耳だれ」が出ることもあります。

滲出性中耳炎は、耳管や中耳の粘膜から出る滲出液が中耳にたまるもの。急性中耳炎が治りきらず、滲出性中耳炎に移行することもあります。鼓膜がふるえにくくなるため、聞こえが悪くなったり耳がつまった感じがしたりします。

耳の構造はこうなっている!

急性中耳炎と滲出性中耳炎の違い

急性中耳炎のおもな症状
・発熱 ・耳の強い痛み ・耳だれが出ることがある

滲出性中耳炎のおもな症状
・聞こえが悪くなる

step2.治療の基本

飲み薬に加え、鼓膜を切開することも

急性中耳炎の場合、病院では鼻水の吸引を行い、抗菌薬や鎮痛薬が処方されます。症状が重い場合は、鼓膜を小さく切開して膿(うみ)を出すこともあります。滲出性中耳炎の場合、滲出液の排出を促す飲み薬や、耳管に空気を通す治療を行います。

症状に応じて、鼓膜を小さく切開して滲出液を吸引したり、鼓膜に開けた穴に小さなチューブ(直径1ミリ、長さ2ミリ程度)を固定したりすることもあります。

step3.予防のためにできること

鼻水のケアをしっかりと!

子どもは耳管が太くて短く、角度も水平に近いため、病原菌が中耳に入り込みやすくなっています。鼻水には細菌やウイルスが含まれるため、すすり上げるのはよくありません。こまめにかんだり、吸引したりして取り除きましょう。

滲出性中耳炎は、急性中耳炎から起こるほか、アデノイド肥大や副鼻腔(ふくびくう)炎など、のどや鼻の病気が関係していることも。耳の治療に加え、原因となる病気を治すことも大切です。

構成/野口久美子 イラスト/河合美波

『新 幼児と保育』2018年8/9月号別冊ふろくより

【関連記事】
園で気になる子どもの病気シリーズはこちら!
・保育にも生かせる!タッチケアの基本|やさしくふれあうコミュニケーション
・熱中症・プール熱・はやり目【園で気になる子どもの病気 #8】
・3ステップで備える「子どもの健康早わかりシート」~B型肝炎・小さなけがの応急手当て~
・アトピー性皮膚炎・就学前の予防接種【園で気になる子どもの病気 #7】
・3ステップで備える「子どもの健康早わかりシート」~RSウイルス感染症&尿路感染症~
・発疹が出た!【園で気になる子どもの病気 #6】
・0~2歳児 誤飲・誤嚥の応急処置【園で気になる子どもの病気 #5】
・RSウイルス感染症・気管支ぜんそく【園で気になる子どもの病気 #4】
・3ステップで備える「子どもの健康早わかりシート」~熱性けいれん&中耳炎~
・0~2歳児 食物アレルギーの基礎知識【園で気になる子どもの病気 #3】
>>もっと見る

保育者のみなさんに役立つ情報を配信中!

クリックして最新記事をチェック!
連載
園で気になる子どもの病気

保育者の学びの記事一覧

雑誌最新号