考えたことを描こう!「考えて表現する」【絵画・造形 ゆたかな表現 #】

連載
絵画・造形 ゆたかな表現
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乳幼児期の子どもは成長とともに、見る力・感じる力・考える力が大きく育っていきます。連載の最終回は、子どもたち自身が「経験したこと」を思い出したり、想像・空想を広げて描く、「考えて表現する」描画制作を紹介します。

監修

田代耕司 先生
造形作家

岡山県で中学校の美術教諭を経験。上京後、出版社に勤務し、幼児・保育者向け出版物を編集。教材・玩具類の企画開発を行うかたわら、紙を素材にした造形作品を展覧会・各種 出版物などで発表。道灌山保育福祉専門学校講師を務めたのち、現在は保育者・親子を対象に全国で造形実技指導を行っている。著書に『ふれあい造形遊び』(小学館)など。

「考えて表現する」

さまざまな活動を体験し、子どもたちの言葉の力は育まれていきます。そして、見たものを言葉として覚え、「好きな食べ物はリンゴだよ」「お花が咲いたよ」などと、覚えたものをクレヨンなどを使って「描く」という表現活動ができるようになります。

そういったものを描く活動と並行して、いろいろな形を組み合わせて経験した状況を表現したり、自分なりに想像したことを整理して構成したり、少しずつ自分自身で考えて表現することができるようになっていきます。

考えて描くことができるようになると、描画による表現の世界が見違えるように広がっていきます。

思い出して描く

楽しかった思い出やお話をテーマに、心に残ったことを表現します。まずは、子どもたちと話し合ってみましょう。同じ出来事であっても、子どもの記憶はそれぞれです。話をしていると記憶が確かなものになっていきます。そうした準備の時間を持つことで、活動にも入りやすくなります。

楽しかったよ!

園では季節に合わせて行事が行われ、楽しかったり、驚いたり、いろいろなことを経験します。そのままにしてしまうと記憶はどんどん薄れてしまいますので、できるだけ運動会のあと、遠足のあと、発表会のあとなど、子どもたちが体験したすぐあとに行うといいでしょう。

自分の作品を持っている子1
自分の作品を持っている子2
自分の作品を持っている子3

1年を振り返るには、特に話し合いにたっぷりと時間をかけたい。友達との会話やかかわりから、思い出が鮮やかになることも。

おはなし大好き

絵本やおはなしの読みかせなどで「言葉で聞いたこと」を思い出し、感動した場面を描きます。絵本の絵をそのまま描くのではなく、自分自身の体験や知識をベースにイメージを構成して表現します。

自分の作品を持っている子4

大好きでくり返し聞いている(読んでいる)おはなしがある場合は、イメージがふくらみやすい。描いた絵は子どもにとって強く心に残っているという証。「この場面、ドキドキしたよね」などと会話を楽しみながら、子どもの表現を見守りたい。

「白鳥の王子」
子どもが描いた「白鳥の王子」
「アラジンと魔法のランプ」
子どもが描いた「アラジンと魔法のランプ」

「色」からイメージがわくこともある。画用紙も白だけではなく、選べるように何色か用意しておくとよい。

「長ぐつをはいたねこ」
子どもが描いた「長ぐつをはいたねこ」
「おすもうを見たよ」
子どもが描い「「おすもうを見たよ」
「太鼓をたたいたよ」
「大きくなったよ」

夢を描こう!

実際にはないものを絵として表現することは、大人でもとても難しいことです。「ロケットに乗って、宇宙探検した夢を見たよ」「先生は子どものころ、看護師さんになりたかったんだ」など、イメージするきっかけになる言葉かけをしましょう。

あったらいいな

子どもたちの話を聞いていると、ちょっとしたことからイメージを自由に広げることができるのを感じます。気をつけなければならないことは、「それは無理」などと否定的な意見を絶対にいわないことです。

「キリンさんのブランコに乗ってみたいな」
「お魚の潜水艦で海の中を探検したいな」
「こんな海の上の家があったらいいな」
「ビルより高い竹馬に乗りたいな」

子どもの想像力は大人が思う以上に豊か。描き出される世界を一緒に楽しもう。

なってみたいな

子どもたちは、たくさんの夢を持っています。子どもたちが将来「なりたいもの」を考えて、絵に描いてみましょう。ここでは、縦長の画用紙に描いた絵を切り抜いて作品にしました。

「なりたいもの」「憧れの職業」を思い描く時間は、ワクワクするもの。「どんなユニフォームだっけ?」と会話をしながら製作したい。親子製作にもピッタリ。

表現するこころ

この「絵画・造形 ゆたかな表現」の連載では、子どもたちが自発的に取り組むことを重視しながら、表現活動への取り組み方について、いろいろな視点で紹介してきました。

子どもたちの乳幼児期における成長には目を見張るものがあります。中でも、自分自身の感覚をもとに、手を動かして表現作品を制作する絵画・造形の分野は、次のステップへの展開を確かにする基礎能力の開発に有効です。

子どもたちの「できた!」の喜びを大切にして、楽しく制作活動を展開し、前向きでクリエーティブな世界へ導いていきましょう。

文/田辺泰彦(アスク・ミュージック)
撮影/藤田浩司
写真協力/町田こひつじ幼稚園(東京・町田市)

『新 幼児と保育』2021年2/3月号より

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