ひとを描こう!「よーく見ると…」【絵画・造形 ゆたかな表現 #4】

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子どもたちは、親・先生・友達など、「ひと」とのふれあいを通して成長していきます。今回は、「ひと」を観察し、表現する活動とその作品例を紹介します。

監修

田代耕司 先生
造形作家

岡山県で中学校の美術教諭を経験。上京後、出版社に勤務し、幼児・保育者向け出版物を編集。教材・玩具類の企画開発を行うかたわら、紙を素材にした造形作品を展覧会・各種 出版物などで発表。道灌山保育福祉専門学校講師を務めたのち、現在は保育者・親子を対象に全国で造形実技指導を行っている。著書に『ふれあい造形遊び』(小学館)など。

指導

落合英男 先生

幼・小・中・高・短大・大学・専門学校などでの実践に基づいた描画指導に定評があり、絵画療法の第一人者でもある。また、子どもの指導のみならず、障がい者施設や老人ホームでも精力的に活動している。

子どもの成長と絵の発達

子どもが最初に意識するのは、母親の顔だといわれています。子どもは「ひと」とのふれあいを通して成長していくのです。そのことから、子どもの描く「ひと」の絵に注目し、描画表現が成長していく様子を段階的に並べてみると、「見る力(観察する力)」の育ちをとらえることができます。ここでは、描画表現のサンプルを見ながら、乳幼児期の育ちのプロセスを展望してみましょう。

無意識の「なぐり書き」に始まり、子どもたちは「見る力」をこのように獲得していきます。あらためて、子どもたちの成する早さと力強さに驚きを感じます。

活動のポイント

  • 子どもの発達段階を考慮し、楽しく取り組める内容にする。
  • テーマやポイントを具体的にわかりやすく伝える。
  • 子どもの心が動いたタイミングに、新鮮なテーマを示す。
  • 個々の活動を見守りながら、適切な言葉かけを行う。特に低年齢児は気持ちを確かめながら、前向きにチャレンジできるようにサポートする。
  • テーマや描画材料などの選択に配慮し、単なるくり返しにならないようにする。

0歳から5歳児が描いた「ひと」の絵を、順に並べました。個々の発達・経験の違いによって個人差があるため年齢表示はしていませんが、おおむね子どもの絵はこのように発達していきます。

「なぐり書き」をする

画材を手にすると無意識に腕を動かし、画用紙に「なぐり書き」をします。この時期の子どもは、体を動かしながら、五感の基礎的な経験をします。

言葉を覚え始める

形を描きながら「パパ」といったり、偶然描いた形を見て「ママ」といったりします。こういった対話は、感覚的な経験(見る・聞く・触る・嗅ぐ・食べる)がベースになっています。

いろいろな形を描くようになる

ものを認識する力、言葉を獲得する力がついてくると、「目・口・髪の毛・鼻・耳」というように、表現する形が具体的になってきます。

「手・足」を描くようになる

育ちの過程で、幼児期に特有の表現スタイルである、頭から手と足が出る人間「頭足人」を描くことがあります。これは決して、不自然なことではありません。子どもが認識していく順番(顔〜手〜足)に表現された結果と考えられています。

「体」を描くようになる

人形的な表現をするようになり、表現する形が進みます。くり返し同じ形を描くという傾向が出てきます。

「手・指」などを描く

顔や体の観察が進み、描く形がはっきりしてくる時期です。手と指の関係なども認識して描くようになります。

全体をとらえる

細かいところまでしっかりと観察し、全体的な形をとらえて表現できるようになってきます。

いろいろなアプローチで「ひと」を 表現しよう

「ひと」を描くといっても、いろいろなアプローチの仕方があります。子どもの発達や特性、環境、保育計画などに配慮することが前提ですが、興味や関心が高まったベストなタイミングで実施することで、子どもたちの見る力・観察する力がよりパワーアップします。

みんなの先生

先生をモデルにみんなで描きました。できた作品を見せ合いっこすると、モデルは同じ先生なのに、できあがった作品はいろいろ。感想を話し合うといろいろな発見がありました。

等身大の自分

模造紙1枚を使って、「わたし」の絵を描きました。まず、模造紙の上に寝そべってポーズを決め、輪郭をなぞってもらいました。その後は、自分で一生懸命「わたし」を描き込むと、等身大の作品に仕上がりました。いままでに描いた中で一番大きな作品になりました。

すごい表情

貼り絵で顔を作りました。貼り絵はのりづけする前であれば、顔のパーツを自由に動かすことができます。いろいろ動かしてみて、最後に力強い表情の作品に仕上がりました。

卒園の記念に

年長児が卒園に合わせて土粘土で自分の顔を作りました。できた作品は乾燥させて窯で焼き上げ、焼き物の作品に仕上げました。また、卒園の日まで全員の作品をパネルに貼って、共同作品として園内に飾りました。

お父さんの顔 お母さんの顔

父・母へのプレゼントに顔を描くことは、多くの園で行われています。「コンテ」を使ってチャレンジしてみました。子どもたちは慣れない描画材に熱心に取り組みました。いつも以上に力が入った作品になりました。

粘土でポーズ!

油粘土を使って、体を作りました。はじめに頭・胴・手・足を作り、粘土板の上で組み立ててから、油粘土の柔軟性を生かして、手足を動かして自分の好きなポーズを作りました。

みんなのバス

はじめに、3㎝角の小さな画用紙に自分の顔を描きました。いつも描いている紙に比べると、とても小さいのでとまどう子もいましたが、10分ほどで終了。クラス全員の絵をまとめると、共同作品になりました。コピーして、クラスだよりと一緒に家庭に配るととても好評でした。

文/田辺泰彦(アスク・ミュージック)
写真/藤田修平
撮影協力/認定こども園みどりのもり都田(静岡・浜松市)、町田こひつじ幼稚園(東京・町田市)

『新 幼児と保育』2020年10/11月号より

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