保育にも生かせる!タッチケアの基本|やさしくふれあうコミュニケーション

連載
園で気になる子どもの病気
関連タグ

低出生体重児(未熟児)で生まれた赤ちゃんをそっとなでる接触療法から始また「タッチケア」。一般的な乳幼児にとっても情緒の安定、睡眠時間の増加、成長の促進などの効果が今では認められています。ぜひ保育に取り入れてみませんか。

タッチケア指導

山下博子さん(看護師)

総合母子保健センター愛育クリニック看護部。日本タッチケア協会認定指導者。

監修

澁谷紀子 先生(小児科医)

総合母子保健センター愛育クリニック院長兼母子保健科部長。

スキンシップの効果で
ケアをする側も幸せな気分に

「タッチケア」は、肌のふれあいを通して子どもとのきずなを深め、成長を促していく働きかけです。触覚は、五感の中で最も早く発達するもの。やさしく触れられると、脳から「オキシトシン」という物質が分泌されます。オキシトシンの別名は「幸せホルモン」。分泌量が増えると安心感が高まり、やさしく幸せな気分になっていきます。

医学的にも、タッチケアによる低出生体重児の体重の増加や、ストレスホルモンの減少、入眠までの時間の短縮などのエビデンスが報告されています。また、スキンシップには相互作用があるため、タッチケアを行う側にも優しく満たされた気分をもたらす効果があります。

タッチケアに大切なのは、大人も子どももリラックスして楽しむこと。子どもと視線を合わせ、やさしく語りかけながら行いましょう。指先ではなく、手のひら全体を子どもの体に当て、「1秒間に5センチ」を目安に、ゆっくりと動かすのが基本です。最初は、肌をなでるくらいの強さから。慣れてきたら、触れた部分が少し白くなるぐらいの圧を加えてみましょう。素肌に行うのが基本ですが、保育中であれば、服の上から行っても効果が期待できます。

タッチケアのポイント

  • 子どもとしっかり視線を合わせ、表情の変化などを見ながら行う。
  • やさしく語りかけたり、歌を歌ったりしながら、ケアを楽しむ。
  • 顔はなでる程度、体や手足は肌が少し白くなるぐらいの強さが目安(※)。
  • 「1 秒間に5センチ」の速さを目安に、ゆっくりと手を動かす。
  • 始める前に手を洗い、ぬるま湯に浸すなどして手を温める。
  • 爪は短く切り、手につけたアクセサリーや腕時計は外して行う。

※ 力加減は、子どもに合わせて調節する。

素肌に行うときはオイルを使って

素肌に行う場合は、無香料のベビーオイルを大人の手に取り、両手になじませてからケアを行います。

初めてのオイルを使うなら……

少量のベビーオイルを綿棒に取り、子どもの腕の内側につけます。10分ほど時間をおき、赤くなるなどの異常が見られないこと確認してから使いましょう。

タッチケアのいろいろ Q&A

Q.手順どおりに行わないとダメ?

A.タッチケアの手順や回数に決まりはありません。子どもが喜ぶ部分を選んで行えば十分です。リラックスして心地よく感じることが大切なので、子どもがいやがるなら無理をさせる必要はありません。

Q.タッチケアはいつ行う?

A.リラックスできるときならいつでもOK。ただし、以下のタイミングは避けたほうが安心です。

× タッチケアを避けたいとき
・授乳や食事の直後(30 分以内を目安に)
・空腹時
・入浴の直後
・体調がよくないとき
・眠っているとき

Q.決まった姿勢をとらなければダメ?

A.無理なくできるのであれば、どんな姿勢でもかまいません。布団やバスタオルの上に寝かせるのはもちろん、膝に抱いて行うのもおすすめです。

縦抱きにして背中にタッチ。
膝にすわらせておなかや手足にタッチ。

顔のタッチケア

<基本のポジション>
両手で顔を両脇から包み込むようにします。
親指を眉間に当て、こめかみに向かって額をマッサージします。
親指を鼻の横に当て、目の下を通って顔の横へマッサージします。
手の位置を少しずつ下へずらしながら、あごまで内側から外側へ向かってマッサージします。
人さし指~小指を揃えて両耳の後ろに当て、あごの下へ向けてなで下ろします。

胸~おなかのタッチケア

胸の中央に両手を置き、手のひら全体でハート形を描くようにマッサージします。
左手を、おなかの左側を押さえるように添えます。右手で胸の中央から肩へなで上げ、同じところをなで下ろします。

反対側も、手をかえて同様に。右手をおなかに添え、左手でマッサージを。

おへそに両手を当て、両手を交互に使って上から下へマッサージします。
両手を交互に使って、おへそのまわりに時計回りで円を描くようにマッサージします。便秘にも効果があります。

腕~手のタッチケア

片方の手で、子どもの手首を持って腕を支えます。もう片方の手で手首を軽く握り、肩へ向けてなで下ろします。
子どもの腕を両手で軽く握り、手を内側・外側へ滑らせるようにマッサージします。
子どもの腕を両手ではさみ、手のひらの間で転がすようにマッサージします。
両手で子どもの手を支えます。子どもの手のひらに両手の親指を当て、指先へ向けてなで上げます。
子どもの指を1本ずつつまみ、つけ根~指先へ向けてマッサージします。

足~足の裏タッチケア

両手を交互に使い、軽く握った太ももから足首へなで下ろします。
子どもの足を両手で軽く握り、手を内側・外側へ滑らせるようにマッサージします。
子どもの足を両手ではさみ、手のひらの間で転がすようにマッサージします。
両手で子どもの足を支えます。足の裏のかかとのあたりに両手の親指を当て、つま先へ向けてマッサージします。
両足を持ち上げてひざを曲げ、太ももがおなかにつくまでゆっくり押さえます。その後、ゆっくり伸ばします。

背中のタッチケア

両手を交互に使い、背中を横切るようにマッサージします。肩からおしりのほうへ、少しずつ位置をずらしていきます。

大人の体に対して、横向きに子どもを寝かせましょう。

片方の手をおしりの上に添えます。もう片方の手をうなじに当て、手のひら全体でおしりまでなで下ろします。
両手を背骨の両脇あたりに当て、内側から外側へ円を描くように指の腹でマッサージします。
両手をそれぞれ肩のあたりに置き、おしりへ向けてなで下ろします。

文/野口久美子
イラスト/岡本典子

『新 幼児と保育』増刊『0・1・2歳児の保育』2021夏より

【関連記事】
園で気になる子どもの病気シリーズはこちら!
・保育にも生かせる!タッチケアの基本|やさしくふれあうコミュニケーション
・熱中症・プール熱・はやり目【園で気になる子どもの病気 #8】
・3ステップで備える「子どもの健康早わかりシート」~B型肝炎・小さなけがの応急手当て~
・アトピー性皮膚炎・就学前の予防接種【園で気になる子どもの病気 #7】
・3ステップで備える「子どもの健康早わかりシート」~RSウイルス感染症&尿路感染症~
・発疹が出た!【園で気になる子どもの病気 #6】
・0~2歳児 誤飲・誤嚥の応急処置【園で気になる子どもの病気 #5】
・RSウイルス感染症・気管支ぜんそく【園で気になる子どもの病気 #4】
・3ステップで備える「子どもの健康早わかりシート」~熱性けいれん&中耳炎~
・0~2歳児 食物アレルギーの基礎知識【園で気になる子どもの病気 #3】
>>もっと見る

保育者のみなさんに役立つ情報を配信中!

クリックして最新記事をチェック!
連載
園で気になる子どもの病気
関連タグ

保育者の学びの記事一覧

雑誌最新号