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五感で楽しむ春夏秋冬~10月の園庭いきものマップから【ささき隊長と 身近な自然でとことん遊ぼう!#41】

連載
ささき隊長と 身近な自然でとことん遊ぼう!

プロ・ナチュラリスト

佐々木洋

プロ・ナチュラリストのささき隊長と一緒に、「園庭いきものマップ」を作りながら、季節の自然を観察しましょう。見つけた生き物や草花を記録していくと、園庭(公園)はやがて“生きた図鑑”に。そして、その発見は、触れてみる、比べてみる、まねしてみるなど、さまざまな自然遊びへと広がっていきます。

今回は、10月の「園庭いきものマップ」をご紹介します。10月といえば秋真っ盛り……のはずなのですが、最近の園庭は、ちょっと様子が変わってきているんです。

ささき隊長/佐々木 洋(プロ・ナチュラリスト)

練馬区立北大泉幼稚園(東京・練馬区)の10月の園庭いきものマップ。

秋が来たのに、夏が帰らない⁉ 重なり合う10月の園庭  

ささき隊長 こんにちは、ささき隊長です。

10月といえば、秋真っ盛り。

これまでなら、バッタ、カマキリ、コオロギ……そんな「秋の虫」の世界でした。

ところが最近は、そうとも言い切れなくなってきているんです。

10月も、けっこう暑い日がありますよね。

だから夏の虫がまだまだ生き残っていて、下手をするとセミが鳴いていることもあるんですよ。

逆のことも起きています。8月の時点で、かつてはあまり見られなかったバッタの成虫やカマキリの成虫が、ほぼ毎日のように見つかるんです。

つまり、夏と秋が重なってしまったような感じなんですね。

「秋が早く来た」というよりも、「夏をまるごと引きずったままの秋」。

10月の園庭では、そんな夏と秋が同居しているような様子が見られるかもしれません。

とはいえ、中心はやっぱり秋の生き物です。

カマキリやバッタが多いことは確かですし、アキアカネなど、いわゆる赤トンボが飛ぶのもこの時期。

植物もそろそろ実りの季節です。みんなが大好きなどんぐりだけではなく、いろいろな木の実が実り始めます。

名残の夏の昆虫、プラス秋の昆虫と秋の実り──。

10月の園庭は、そんな欲張りな月だと思ってください。

写真/PhotoAC

コオロギの声は「時計」ではなく「温度計」

園庭いきものマップにも、コオロギが登場していましたね。

コオロギというと「鳴く虫」、それも「秋の夜に鳴くもの」というイメージがありませんか。

ところが、コオロギやキリギリスの仲間が鳴くかどうかを決めているのは、明るさではなく気温なんです。

一般的には、15度から25度くらいの間で鳴く、と言われています。

日中に20度を超えていると、暑いので夜しか鳴きません。

20度を割ってくると、昼も夜も鳴くようになります。

そして15度前後まで下がると、今度は夜が寒くなりすぎて、昼間しか鳴かなくなるんですね。

つまり、季節が進むにつれて、「夜だけ」→「昼も夜も」→「昼だけ」というステップを踏んでいくわけです。

昔の10月は、もうだいぶ涼しくなっていましたから、「昼しか鳴かない」季節でした。

ところが今は、夜も気温があまり下がらないので、昼も夜も鳴いている。

鳴き声が聞こえるかどうかが、そのまま気温のものさしになりますね。

金木犀も彼岸花も早めに登場。それでも園庭は「実りの季節」

虫だけの話ではありません。

金木犀は、昔は11月に入ってから咲くイメージがとても強かったのに、今は10月の頭にはもう咲いていますよね。

秋の代表選手である彼岸花にいたっては、8月のうちから咲いているのを見かけることもあります。

暑いから遅れる、涼しいから出てくる、という単純な話ではもう割り切れなくなってきているのかもしれません。

昔ほど秋っぽくないね、というのは、仕方がないことなのです。

そして、子どもたちは、そんな夏と秋が重なった季節しか知りません。

ですから、図鑑や昔の絵本に書かれている「季節の様子」も、近い将来には成り立たなくなってしまうかもしれません。

そんな時代だからこそ、園庭いきものマップの出番です。

「去年の10月には何がいたっけ?」と見返せる記録が園に残っていくことが、これからますます大きな意味を持ってきますよ。

写真/photoAC

10月の園庭いきものリスト

練馬区立北大泉幼稚園の10月(2025年)の「園庭いきものマップ」に登場したのは、こんな生き物たちです。

  • ニシキギ…「ふしぎな かたちのえだ!」の正体は、これ。ニシキギの枝には、板のようなヒレ(翼=よく)がついているんです。秋には葉が真っ赤に紅葉して、赤い実がぱっくり割れ、中からオレンジ色の種が顔を出します。
  • オオバコ…人に踏まれる場所ほど元気に育つ、たくましい草。細長い穂を2本たすきがけにして引っぱり合う「オオバコずもう」は、昔からの定番遊びです。
  • ハラビロカマキリの卵…カマキリの卵は、正しくは「卵のう(卵鞘=らんしょう)」という、泡が固まったもの。ハラビロカマキリのものは、丸っこくてつるんとした形をしています。
  • カキ…10月の園庭の主役です。熟して割れた実には、タテハチョウやカナブンが果汁を吸いに集まってきます。木の上だけでなく、下に落ちてつぶれた実も見逃さないでください。
  • チカラシバ…「ぬくのに ちからが ひつよう」──名前の由来は、まさにそこ。力いっぱい引っぱらないと抜けないほど、根がしっかりしています。ブラシのような穂はふわふわ。実はイネ科なので、ネコジャラシの親戚です。
  • カマキリ…10月は、成虫が一番目立つ時期。虫めがねでそっとのぞくと、三角の顔がぐるりとこちらを向きます。
  • モモスズメ/エビガラスズメ…どちらも「スズメガ」の仲間で、夜に活動するガです。モモスズメの幼虫はサクラやウメなどの葉を、エビガラスズメの幼虫はアサガオやサツマイモの葉を食べて育ちます。羽を三角に広げてじっと止まっている姿は、まるで小さな戦闘機ですね。
  • ヒガンバナの葉っぱ/スイセンの葉っぱ…花が終わったヒガンバナは、秋から冬にかけて葉を伸ばします。スイセンの葉とそっくりなのですが、子どもたちの発見どおり、ヒガンバナの葉は真ん中に白い線が入り、スイセンには入りません。よく見比べてみてください。どちらも毒を持つ植物なので、口に入れないように気をつけて。
  • コオロギ…気温によって鳴く時間が変わる、「生きた温度計」。10月の園庭では、昼に鳴いているか、夜に鳴いているか。ぜひ耳を澄ませてみてください。
  • アカマンマ…本当の名前はイヌタデ。赤い粒々の花穂を「お赤飯」に見立てて、あかまんま。ままごとの定番ですね。
  • ヤゴ…トンボの幼虫。「しおからとんぼの ようちゅうだよ」という記録のとおり、シオカラトンボは園庭のプールや小さな池でもよく育ちます。10匹も見つかったとは、大発見ですね!

次回は、10月の園庭でよく見かける「タテハチョウ」の仲間に注目します。

羽のヘリがギザギザ、足が4本に見えて、飛び方はグライダー──不思議がいっぱいの蝶ですよ!

文・写真/神﨑典子 写真/神﨑典子、photoAC

佐々木 洋(ささき隊長)

ささき ひろし 1961年、東京都出身。プロ・ナチュラリスト。(財)日本自然保護協会の自然観察指導員、東京都鳥獣保護員などを経て、プロの自然案内人として自然解説活動を展開。子どもたちへの自然観察指導など、自然のおもしろさや大切さを案内している。『どうぶつのないしょ話』『生きものハイウェイ』(ともに雷鳥社)、『新 都市動物たちの事件簿』(時事通信社)など著書多数。

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