都会っ子⁉ 山からアキアカネが帰ってくる!~五感で楽しむ9月【ささき隊長と 身近な自然でとことん遊ぼう!#40】
プロ・ナチュラリストのささき隊長と一緒に、「園庭いきものマップ」を作りながら、季節の自然を観察しましょう。見つけた生き物や草花を記録していくと、園庭(公園)はやがて“生きた図鑑”に。そして、その発見は、触れてみる、比べてみる、まねしてみるなど、さまざまな自然遊びへと広がっていきます。
9月の終わりごろ、園庭に赤トンボがやってきます。じつはあのトンボ、遠い山から帰ってきたところなんですよ。
ささき隊長/佐々木 洋(プロ・ナチュラリスト)

目次
お帰りなさい! 帰ってきたアキアカネ
ささき隊長 こんにちは、ささき隊長です!
9月も終わりに近づくころ、園庭に赤いトンボが姿を見せ始めます。
アキアカネ。いわゆる赤トンボの代表格。
ちなみに、#32でお話ししたウスバキトンボとは、まったく別のトンボです。
そして——じつは9月30日、ぼくの誕生日なんです(笑)。
アキアカネが帰ってくるころに、ぼくが生まれた、というわけです。
赤トンボは、東京から長野まで旅をする
アキアカネは、基本的に田んぼで生まれ育ちます。
羽化するのは6月ごろ。
ところが、この虫は暑さがとても苦手なんです。
そこでどうするかというと——山へ行きます。
東京近郊生まれのアキアカネが、長野や群馬あたりの高原まで飛んでいくんですよ。
夏休みに高原を歩いていると、赤トンボがたくさん飛んでいますよね。
「さすが高原だなあ」と思うわけですが、けっこうな割合で“都会っ子”です(笑)。
山にいる間は、オスもメスも茶色っぽい体をしています。
そして秋、涼しくなってきたころに戻ってくるのですが、そのとき、オスだけが真っ赤に染まっているんです。
秋に目立つから、秋茜(アキアカネ)。いい名前ですね。
「当たり前にいる」生き物ではありません
ただ、近ごろは事情が変わってきました。
9月になっても、まだ暑いですよね。
すると、帰ってきたアキアカネが「うわ、暑いな」となる。
山梨あたりで止まってしまって、そこから先に進まない。そういう個体が増えているんです。
そのぶん、東京の街なかで見られる数は、年々減っています。
理由はもうひとつあります。
アキアカネは田んぼで育つのですが、その田んぼ自体が減ってしまいました。
さらに、冬の間水を張っておく田んぼ——冬水田んぼ——も少なくなりました。
帰ってきても、卵を産む場所がないんですね。
だからお伝えしたいのは、こういうことです。
当たり前にいるように見える生き物が、じつは当たり前ではなくなってきている……。
全然やってこない年もあれば、急にたくさん来る年もあります。
「赤トンボが来たよ!」「赤トンボ、見つけた!」
それは、すごくラッキーなことなのです。

見つけるコツは、夕方の電線をチェック
アキアカネは、オニヤンマなどと違って、よく止まります。
指をさし出していると、そこに止まってくれることもあります。
では、一番最初に「帰ってきたな」と気づくには、どこを見ればいいか。
電線です。
園庭から見える電線を、毎日チェックしてみてください。
特に夕方。お帰りやお迎えの時間帯によく止まっています。
「昨日は1匹だったのに、今日は5匹になってる」
そうやって数が増えていくのが、そのまま「秋が深まっていく記録」になります。
園庭に池があれば、10月の初めごろ、2匹が連結したまま卵を産む姿が見られるかもしれません。
これはかなりラッキーな場面ですよ。
そしてもうひとつ。
園に来てくださるおじいちゃん、おばあちゃんがいたら、聞いてみてください。
「このトンボ、なんていうトンボですか?」
「夕焼け小焼けの赤とんぼ〜♪」と、『赤とんぼ』の歌を歌いながら虫捕りをした世代の方は、きっと話が止まらなくなるはずです(笑)。
世代をつなぐ話のきっかけにも、赤トンボはぴったりなんです。

〈コラム:生き物メガネ〉トンボのメガネでのぞいてみよう
生き物の目になって世界をのぞいてみる〈いきものメガネ〉のコーナーです。
今回は、トンボのメガネをかけてみましょう。
みずいろメガネ? 童謡『とんぼのめがね』の歌でおなじみですね。
でも、実際にかけてみると、想像とはずいぶん違う世界が広がります。
トンボのメガネをかけると、世界がぐるりと360度、いっぺんに見えてきます。
トンボの目は複眼といって、小さな目がぎっしり集まってできています。
だから後ろも、上も、ほとんど死角なし。
こっそり背後から近づいても、とっくにバレているわけです。
ところが、おもしろいことに弱点もあるんですよ。
トンボのメガネは、左右の動きにはとても敏感なのに、前後の動きにはあまり気づきません。
横にすっと動くものはすぐ察知するのに、正面から真っすぐ近づいてくるものは、なかなか判別できないんですね。
ここが観察のポイントです。
トンボに近づくときは、横に動かないこと。
体をまっすぐ立てて、正面から、ゆっくり、じわりと。
そして何より、あわてて動かないこと。
「横に 動くと、ばれちゃうよ」
「真っすぐ、そーっとね」
そんなふうに声をかけながら、子どもたちと一緒に息を潜めてみてください。
指先にトンボが止まった瞬間の、あの静けさ。
きっと忘れられない秋の思い出になりますよ。
そして、トンボに目がない(めがねぇ)、と言われるほど、トンボが大好きになるでしょう(笑)。

次回#41からは10月の自然遊び。園庭いきものマップも衣替です。すっかり秋色になった園庭を一緒にのぞいてみましょう。
文/神﨑典子
佐々木 洋(ささき隊長)
ささき ひろし 1961年、東京都出身。プロ・ナチュラリスト。(財)日本自然保護協会の自然観察指導員、東京都鳥獣保護員などを経て、プロの自然案内人として自然解説活動を展開。子どもたちへの自然観察指導など、自然のおもしろさや大切さを案内している。『どうぶつのないしょ話』『生きものハイウェイ』(ともに雷鳥社)、『新 都市動物たちの事件簿』(時事通信社)など著書多数。

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