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世界一、音楽的なセミ⁉ ツクツクボウシの4楽章~五感で楽しむ9月【ささき隊長と 身近な自然でとことん遊ぼう!#38】

連載
ささき隊長と 身近な自然でとことん遊ぼう!

プロ・ナチュラリスト

佐々木洋

プロ・ナチュラリストのささき隊長と一緒に、「園庭いきものマップ」を作りながら、季節の自然を観察しましょう。見つけた生き物や草花を記録していくと、園庭(公園)はやがて“生きた図鑑”に。そして、その発見は、触れてみる、比べてみる、まねしてみるなど、さまざまな自然遊びへと広がっていきます。

9月の主役は、なんといってもツクツクボウシ。じつは、セミの中でもとびきり“音楽的”な鳴き声の持ち主なんです。

ささき隊長/佐々木 洋(プロ・ナチュラリスト)

ツクツクボウシの声を味わう 

ささき隊長 こんにちは、ささき隊長です!

前回、9月の秋のサインはツクツクボウシの声だ、というお話をしました。

今回はそのツクツクボウシの声を、とことん聞いてみましょう。

まず、いつ、どこで聞けるか。

ツクツクボウシは、真っ昼間にはあまり鳴きません。

よく鳴くのは、夕方。西日が差してくるころです。

そして、カキの木が大好きなんですよ。

カキの木って、幼稚園や保育園に割とありますよね。

そのカキの木を、夕方にそっと見上げてみてください。

セミなのに第1楽章から第4楽章まである⁉

ほかのセミの声を思い出してみてください。

「ミーンミンミンミー」「ジリジリジリ」

正直に言うと、単調ですよね(笑)。

ところがツクツクボウシは、まるで違うんです。

はじめは「ジー……」と低く入って、そこから「オーシンツクツク、オーシンツクツク」。

だんだんテンポが速くなって、たたみかけてくる。

そして「ツクツクチッ、ツクツクチッ」と切り替わり、最後に「ジー」と余韻を残して終わる。

ぼくにはこれが、第1楽章、第2楽章、第3楽章、第4楽章に聞こえるんです。

まるで、クラシックの交響曲みたいでしょ?

一説には、世界で一番“音楽的に鳴くセミ”とも言われています。

楽譜に書き起こしてみておもしろいセミなんて、たぶんツクツクボウシくらいのものです。

ぼくには夢があります。

もし、とんでもないお金持ちになったら、ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団に依頼して、サントリーホールでツクツクボウシを演奏してもらいたい(笑)。

それくらい、音楽性が高い。子どもにとっても聞きやすくて、おもしろい声なんです。

「聞きなし」で遊ぼう|「オーシン」? 「ベーシン」?

鳥の世界には昔から「聞きなし」という遊びがあります。

鳴き声を人の言葉に置き換えて楽しむ遊びです。

これをツクツクボウシでやると、すごく盛り上がりますよ。

というのも、ツクツクボウシは声が複雑だからなのか、個体によってかなり鳴き方が違うのです。

アブラゼミはみんな「ジリジリ」ですが、ツクツクボウシはテンポが速い子も遅い子もいる。

「オーシンツクツク」と聞こえるのもいれば、どう聞いても「ベーシンツクツク」というのもいる。

「ツクツクベーシン」と、順番がひっくり返って聞こえるのまで!

じつに個性豊かなんですよ。

メスにも好みがあるのかもしれませんね。「わたしはベーシン派だわ」なんて(笑)。

「今、鳴いてるの、なんて言ってると思う?」

子どもたちに、そう聞いてみてください。

「もういいよ、もういいよ、ジィーーーーー。って言ってる!」

そんな答えが返ってきたら、セミの「聞きなし」大成功です。

「聞きなし」が楽しいのは、正解がないところ。聞こえたとおりが、その子の大正解ですから。

写真/PhotoAC

名前の由来は、ふたつの切ない物語

ツクツクボウシという名前の由来には、いくつかの言い伝えがあります。

ひとつは、木を切って暮らしていた親子の話。

お父さんから譲り受けた大事な斧を、息子がなくしてしまった。

山じゅうを捜しても見つからず、とうとう死ぬまで捜しつづけた。

その魂が「つくづく惜しい、つくづく惜しい」と鳴いている——という説。

もうひとつは、九州の筑紫というところにいたお坊さんの話です。

旅の途中で病に倒れ、故郷から遠く離れた土地で亡くなってしまった。

その魂が「筑紫(つくし)恋し、筑紫(つくし)恋し」と鳴いている——という説。

「ツクツクホーシ」という鳴き声からそのまま取ったという説が有力ですが、諸説あります。

でも、これだけたくさんの物語が生まれるということは、それだけ人の心を動かす鳴き声だった、ということですよね。

昔の人も、あの声に耳を澄ませて、感情移入していたわけです。

そう思って聞くと、また少し違って聞こえてきませんか。

ちなみにツクツクボウシは、姿もとても繊細です。

小さくて、透明な翅(はね)。どこに止まっているのか、なかなかわからない。

素早くて、捕まえるのも難しい。

だからこそ、ぼくは子どものころ、ツクツクボウシが捕れると本当にうれしかったんですよ。

セミの中で一番好きです。大学のときのゼミ(セミ)でもツクツクボウシの研究をしていたほどです(笑……ウソです)。

写真/PhotoAC

ささき隊長の 質問ドンとコイ! 

Q ツクツクボウシは、みんなで合唱しているってホント?
A 答えは×

1匹が「オーシンツクツク」と鳴いていると、そのまわりで別のオスが「ジー、ジー」と鳴いていることがあります。

リードボーカルとバックコーラス。仲よく合唱しているように聞こえますよね。ぼくも子どものころは、ほほえましいなあと思って聞いていました。

でも、あれは応援ではないんです。

「オーシンツクツク」と鳴いているオスは、メスを呼んでいます。つまり「ぼくと結婚して!」と言っている。

まわりのオスたちは、その声を邪魔しているんですね。「やめとけ、やめとけ」「こっちにもオスがいるぞ」と。

バックコーラスどころか、意図的な妨害。せっかくのラブソングをかき消しにかかっているわけです。

大人になってそれを知ったとき、ぼくは「なんだかなぁ〜」と思いました(苦笑)。

         次回#39は、秋のフェンスにぶら下がる、オレンジ色のカラスウリに注目します。鳥の「カラス」とはどんな関係があるの⁉ お楽しみに!

文/神﨑典子

 

佐々木 洋ささき隊長)

ささき ひろし 1961年、東京都出身。プロ・ナチュラリスト。(財)日本自然保護協会の自然観察指導員、東京都鳥獣保護員などを経て、プロの自然案内人として自然解説活動を展開。子どもたちへの自然観察指導など、自然のおもしろさや大切さを案内している。『どうぶつのないしょ話』『生きものハイウェイ』(ともに雷鳥社)、『新 都市動物たちの事件簿』(時事通信社)など著書多数。

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