グライダーみたいに飛ぶタテハチョウの不思議~五感で楽しむ10月【ささき隊長と 身近な自然でとことん遊ぼう!#42】
プロ・ナチュラリストのささき隊長と一緒に、「園庭いきものマップ」を作りながら、季節の自然を観察しましょう。見つけた生き物や草花を記録していくと、園庭(公園)はやがて“生きた図鑑”に。そして、その発見は、触れてみる、比べてみる、まねしてみるなど、さまざまな自然遊びへと広がっていきます。
今回は、10月の園庭や公園でよく見かける「タテハチョウ」の仲間に注目します。羽のヘリがギザギザで、足は4本に見えて、飛び方はグライダー ──不思議がいっぱいの蝶なんです。
ささき隊長/佐々木 洋(プロ・ナチュラリスト)

目次
羽はギザギザ、足は4本⁉ タテハチョウは不思議だらけ
ささき隊長 こんにちは、ささき隊長です!
10月の園庭でぜひ探してほしいのが、「タテハチョウ」の仲間です。
ちょっと変わった名前の蝶ですが、見分けるポイントはとてもわかりやすいんですよ。
それは、翅(はね)のヘリがギザギザなこと。
モンシロチョウやアゲハチョウは、翅のヘリがつるっとしていますよね。
ところがタテハチョウの仲間は、まるではさみで切り刻んだような、ギザギザの翅を持っているんです。
大きさは、モンシロチョウとアゲハチョウのちょうど中間くらい。
園庭で「なんだか、あの蝶の翅、ギザギザしてない?」と思ったら、まずタテハチョウの仲間だと思ってください。
園庭や公園で出会える「タテハ御三家」
タテハチョウの仲間はたくさんいるのですが、園庭でよく見かけるのは次の3種類。私はひそかに「御三家」と呼んでいます。
キタテハ、ルリタテハ、ヒメアカタテハ。
どれも共通して、翅のヘリがちょっとギザギザした感じをしています。
ちなみにタテハチョウは、群れていることがあまりありません。
モンシロチョウのように何匹もひらひら、という感じではなく、たいてい孤独な1匹でいることが多い蝶です。
そしてこのタテハチョウ、おもしろいことがいっぱいあるんですよ。
「足が4本しかない!」──常識がひっくり返る瞬間
じつは、タテハチョウの仲間は、足が4本にしか見えないんです。
これが一番の特徴!
昆虫の足は6本──これは大人も子どもも知っている「常識」ですよね。
ところがタテハチョウは、どう数えても4本にしか見えない。
じつは、あと2本の前足は退化していて、あるにはあるのですが、人間の目にはほとんど見えないんです。
よくよく見ると、ポチッと点のように見える部分があり、それが前足なのですが、葉っぱに止まっている姿を見ると、どうしても4本足に見えてしまう。
常識がひっくり返る瞬間です。
この「蝶なのに足が4本」という話は、保育の場でけっこう話題になります。
なぜなら、大人はそこまで細かく観察していないので気がつかないのですが、ちょっと虫に詳しい「昆虫博士」の子が、「これ、おかしいよ!」と大人に報告してくることがあるからです。
もし捕まえられたら、ぜひみんなで足の数を数えてみてくださいね。
タテハチョウは、花にも来るのですが、それよりも割れた果実によく集まります。
熟して割れた柿やイチジクがあると、そこに果汁を吸いに飛んでくるのです。
園庭に柿やイチジクの木があったら、絶好の観察ポイント。
木の上だけでなく、下に落ちてベチャッとつぶれた柿にも来ていますよ。
そしてもうひとつ、タテハチョウには飛び方にも特徴があります。
羽ばたきと滑空をくり返して飛ぶので、英語では「グライダー」と呼ばれます。
すーっと滑空しているシーンをよく見かけるので、飛んでいる姿だけでも「あ、タテハチョウだ」とわかるようになるはず。
ちなみに、一番よく見かけるキタテハは、翅がヒョウ柄なので、私は「ヒョウ柄のグライダー」と呼んでいます(笑)。

翅(はね)を閉じれば、ただの枯れ葉⁉
タテハチョウのすごいところは、まだあります。
翅(はね)を広げているときは、あんなにきれいな色が出ているのに、翅を閉じるとまるで枯れ葉なんです。翅の表側は派手でも、裏側はとても地味。
落ち葉の上に止まられたら、本当にだれにも気づかれないかもしれない、というくらいそっくりなんですよ。
ちなみにキタテハは、イモムシの時代もなかなか個性的。
けっこう派手な色をしていたり、突起があるものが多いんです。
園庭でもよく見かけるカナムグラという雑草にいることが多いので、春先などに見つけられるかもしれませんね。
幼虫時代も成虫時代も、チョー(蝶)かっこいいキタテハは、子どもたちの人気者になるはずです(笑)。
ささき隊長の 質問ドンとコイ!
Q タテハチョウは、冬の間どうしているんですか?
A うれしいことに、冬にも出会える可能性が大!
じつはこれが、タテハチョウの一番おもしろいところかもしれません。
多くの蝶は、卵やサナギ、あるいはイモムシの姿で冬を越します。
ところがタテハチョウの仲間には、「大人で冬を越す」タイプが多いんです。
もちろん全部がそうというわけではありませんが、かなりの種類が、あの翅のまま冬をやり過ごします。
ですから、秋によく目立つのはもちろんなのですが──なんと、真冬に登場することもあるんです。
クリスマスやお正月の時期、風のない、ぽかぽかとよく晴れた日。
園庭の日だまりに、ひらひらと蝶が飛んできたら。
「え、こんな季節に蝶?」と、大人のほうがびっくりしてしまうかもしれません。
でもそれは見間違いではなくて、タテハチョウの仲間である可能性が高いんです。
寒い日には、翅を閉じてじっとしています。
だから冬の間、私たちの目に留まらないだけで、じつは園庭のどこかで、蝶の姿のまま、ちゃんと冬を越しているのかもしれませんね。
秋に出会った蝶と冬に出会う蝶が、同じ1匹かもしれない……。
そう思うと、なんだかうれしくなってしまいます。
次回は、秋の果実に集まる「カナブン」に注目します。カナブンとコガネムシ、同じ虫だと思っていませんか? じつはこのふたつ、“そばとうどん”くらい違うんです!
文/神﨑典子 写真/佐々木洋、photoAC
佐々木 洋(ささき隊長)
ささき ひろし 1961年、東京都出身。プロ・ナチュラリスト。(財)日本自然保護協会の自然観察指導員、東京都鳥獣保護員などを経て、プロの自然案内人として自然解説活動を展開。子どもたちへの自然観察指導など、自然のおもしろさや大切さを案内している。『どうぶつのないしょ話』『生きものハイウェイ』(ともに雷鳥社)、『新 都市動物たちの事件簿』(時事通信社)など著書多数。

【関連記事】
ささき隊長と 身近な自然でとことん遊ぼう!シリーズはこちら!
・グライダーみたいに飛ぶタテハチョウの不思議~五感で楽しむ10月【ささき隊長と 身近な自然でとことん遊ぼう!#42】
・五感で楽しむ春夏秋冬~10月の園庭いきものマップから【ささき隊長と 身近な自然でとことん遊ぼう!#41】
・オレンジ色の秋の宝もの・カラスウリで遊ぼう~五感で楽しむ9月【ささき隊長と 身近な自然でとことん遊ぼう!#39】
・都会っ子⁉ 山からアキアカネが帰ってくる!~五感で楽しむ9月【ささき隊長と 身近な自然でとことん遊ぼう!#40】
・五感で楽しむ春夏秋冬~9月の園庭いきものマップから【ささき隊長と 身近な自然でとことん遊ぼう!#37】
・世界一、音楽的なセミ⁉ ツクツクボウシの4楽章~五感で楽しむ9月【ささき隊長と 身近な自然でとことん遊ぼう!#38】
・「鳴く虫たち」のコンサートへ!~五感で楽しむ8月【ささき隊長と 身近な自然でとことん遊ぼう!#36】
・夜の園庭の秘密を探しに行こう!〈後編〉 ~五感で楽しむ8月【ささき隊長と 身近な自然でとことん遊ぼう!#34】
・バッタやコオロギで小さな秋を発見!~五感で楽しむ8月【ささき隊長と 身近な自然でとことん遊ぼう!#35】
・夜の園庭・公園には秘密がいっぱい!〈前編〉 ~五感で楽しむ8月【ささき隊長と 身近な自然でとことん遊ぼう!#33】
>>もっと見る