かかわり方のアイデア《後編》【臨床心理士に聞く 社会性の発達を応援するかかわり方 #3】

特集
発達が気になる子どもへのかかわり方

児童発達支援の現場には、保育に取り入れられるヒントがたくさんあります。『新 幼児と保育』の編集部が、株式会社スペクトラムライフの児童発達支援「早期療育すれい」で行われている療育を見学し、代表で臨床心理士の桑野恵介先生にお話をうかがいました。

シリーズ第3回では、前回に引き続き「Aくん」を事例に、社会性の発達を応援するかかわり方のアイデアを紹介します。

(この記事は、『新 幼児と保育』の増刊『0・1・2歳児の保育』2021夏 に掲載されたものを元に再構成しました)

桑野恵介先生
株式会社スペクトラムライフ代表。臨床心理士、ESDM 認定セラピスト。埼玉県の入間市児童発達支援センターうぃずの受託事業者。2019年埼玉県立上尾特別支援学校特別非常勤講師、東京大学高度医療人材養成プログラム「職域・地域架橋型・価値に基づく支援者育成」講師。

かかわり方の実例

Aくん(1歳10か月)
声かけにあまり反応しない、保護者と視線を合わせることが少ないなどの気がかりから、1歳8か月から療育をスタートしました。

Aくんの目標

1、視線を合わせられるようになる
2、呼びかけに反応するようになる
3、欲しいものを指さしで伝えられるようになる

かかわり方のアイデア6 望ましくない行動はスルー

将来的に「問題行動」と見なされかねない行動には、反応しないのが正解。注目されなければ、その行動を「もっとやってみよう」とは思わなくなります。
たとえかわいらしい行動でも、笑って受け入れてはダメ。でも、叱る必要もありません。注意することも「注目」の一種なので、黙ってスルーするのが正解です。

かかわり方のアイデア7 反応が出るのを待ってみる

「指さし行動」のゴールは、欲しいものを指さしたあと、保育者と視線を合わせて自分の意思が伝わっているのを子どもが確認すること!

指さしたあとに、保育者の顔を見ない場合、保育者は迷うふりなどをして子どものリアクションを少し待ってみます。

かかわり方のアイデア8 「注目するタイミング」を逃さない

保育者は、子どもが注目しているときに反応することが大切。リアクションなどを工夫し、適切なタイミングを見極めながら遊びを進めましょう。Aくんは強めの刺激を好む傾向があるので、あえて大きなリアクションをします。

Aくんが自分に注目しているのを確認してから、名前を呼んでボールを返します。

呼びかけへの反応や、保育者への注目ができているなら、保育者をもうひとり加えて、3人で同じ遊びをしてみてもよいでしょう。

point
ステップアップの要素は一度にひとつ。うまくいかなかった場合に原因が特定できるよう、ステップアップする際、増やす要素はひとつだけにしましょう。

遊びを変えずに人数だけ増やす
→うまくいかなかった場合の原因は、人数が増えたこと。

遊びを変えて人数も増やす
→うまくいかない原因が遊びの種類なのか、人数なのかがわからなくなる。

ときには大人が誘って遊び方を変える

遊び方に変化をつけるなどの「注意の切り替え」には、脳の「前頭前野」がかかわっています。この部位にはさまざまな機能があるうえ、使われることによって脳全体に刺激が広がります。早い段階から前頭前野を使う働きかけをすることは、子どもの発達の手助けになると考えられています。

まとめ

他人との関係づくりの基本は、「かかわったら、よいことがあった」という経験。まずは子ども主導で楽しく遊ぶことから始めましょう。

協力

株式会社スペクトラムライフ 早期教育すれい(埼玉・所沢市)
1歳半程度から就学までの児童に対する発達支援を行っている。1回約50分、スタッフが1対1対応で、机上のお勉強30分、自由遊び20分を行う。子どもそれぞれの優れた部分を伸ばし、苦手な部分に折り合いをつけたり底上げしたりすることを目的としている。また、スタッフとかかわりながら活動することで、「人とかかわることの楽しさ」や成功体験を積んでもらうことも目的の一つ。

 
文/野口久美子 イラスト/河合美波

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