気負わず関係を築く|保護者と保育者の「語らい場」取材リポート

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保護者と保育者、保護者同士の関係をもっと気負わずに築いていくためには――。各園の実践からそのヒントを探ります。

園から場所を移して、まざりあう。保護者同士の関係も深まる「遠足」というしかけ

めぐみ第二保育園(東京・府中市)

気負わない「語り場」のキーワード
いつもと違う場所で子どもと一緒に

めぐみ第二保育園では、年度はじめに家族誰でも参加していい親睦遠足を実施。いつもと違う場所に出かけ、楽しみを共有することで交流を図るというしかけです。保護者と保育者、子どもたちとの関係をより近づけようと始めたもので、日程は毎年4月の第4土曜日、場所は近くの動物公園と恒例にしています。これによって見通しが立ち、ほとんどの家族が参加。

「大人と子ども合わせて200人以上が参加するため、安全に楽しむためにも丁寧な下準備は欠かせません。下見は2回。授乳場所や休憩場所の確認に加え、子どもを通して保護者の気持ちも盛り上がってほしいと、見どころをまとめた新聞も作っています」と副園長の内藤孝子先生(取材当時)。

当日、午後1時に解散したあとは、その新聞を頼りにそれぞれが見学。「〇〇を見てきました」という報告から保育者との会話が生まれることもあります。さらに、保護者同士の関係もでき、5月の懇談会は打ち解けたムードに。

「うちの園に保護者会はないのですが、夏祭りのときなどには声をかけあって出し物などで盛り上がります。降園時には園庭のベンチでおしゃべりする姿も見られます」

クラスごとに集まって昼食。用意した簡単なゲームで盛り上がる。
のんびり歩く道のりも、リラックスした会話が生まれやすい。
動物園の見どころをまとめた新聞は、保護者と保育者の話題の共有に役立つことも。

その子の分身人形作りの過程で生まれる語り合い
〜誕生させる喜びを分かち合う時間~

おおぎ第二保育園(埼玉・入間市)

気負わない「語り場」のキーワード
人形作りを通して子どもと一緒に

なにかを一緒にやり遂げるということ、またはその過程を通して、関係がぐっと近づくということが
あります。おおぎ第二保育園では、保護者と保育者がともに”誕生“させた人形と一緒に園生活を過ごします。入園の際、保護者が最初に取り組むのがこのアイディンティティー人形作りです。

「慣らし保育の間、担当となる保育者と一緒にその子の分身人形を作ります。子どもは別の保育者が見ていますから、おかあさんも安心して取り組んでいます。担当保育者と向き合い、誕生させるという過程では多くの会話が交わされているようです」と園長の中瀬泰子先生(取材当時)。

保護者の中には針を持つことに慣れていない人もいて、一つひとつ縫い上げていく作業はなかなか大変ですが、その分、できあがったときの喜びは大きいもの。その喜びを保育者と共有することも、関係を近づけるひとつのきっかけになるようです。

すべての子どもの慣らし保育が終わったころ、クラスの保護者と保育者で「はじめましての会」を開きます。ここでは、昼間のお母さんとなる保育者の自己紹介に加え、保護者とわが子の自己紹介や子育て観などを話して、わきあいあいと過ごします。

「この先、子育てと仕事の両立で協力し合っていく仲間ですから、顔を合わせてごあいさつしたり、自分だけではなく子育て仲間がいるんだと感じてもらうことが大切だと思うんです。大きなおうちの大きな家族の一員になったと感じてもらえたらいいですね」

保育者(左)と一緒に、わが子の分身人形を作る保護者たち。
わが子に似せて作る、それぞれのアイディンティティ―人形。
人形作りを経て、「はじめましての会」では保護者同士の語り合いも。

文/木村里恵子
写真提供/めぐみ第二保育園、おおぎ第二保育園

『新 幼児と保育』2020年4/5月号より

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