【初めて&不得意な方のための】個人面談を乗りきる+生かす! 保育者知恵袋

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保護者と1対1で向き合う「個人面談」。いつも挨拶しているし、毎日のように言葉だって交わしているのに、あらたまって話そうとするとなぜか……。緊張する! 顔がこわばる! 言葉が出てこない!

個人面談に「苦手意識」を持っている保育者のみなさんのために、保育の専門家&先輩保育者からの知恵を集めました。

監修・お話

写真/藤田修平

百瀬ユカリ 先生

日本女子体育大学スポーツ健康学科幼児発達学専攻教授。博士(社会福祉学)。著書に『新人保育者物語 さくら~保育の仕事がマンガでわかる~』(小学館)、『よくわかる保育所実習 [第五版]』『保育現場の困った人たち』(ともに創成社)など。

個人面談の目的は園と家庭が「同じ方向」を向くこと

家で家族と過ごす時間も、園で友達と過ごす時間も、子どもにとっては大切なもの。かかわる相手やそれぞれの役割は違っていても、園と家庭は一緒に子育てをするパートナーです。

個人面談は、園と家庭で情報を共有するために行うもの。たとえば「園ではAといわれるけれど、家ではBといわれる」といったことがあると、子どもはとまどってしまいます。また子どもには、園だけ、または家庭だけで見せる姿もあります。だから、保護者からは家庭での様子を聞き、保育者からは園での様子を伝える……。一人ひとりについてしっかり情報交換をし、園と家庭が「同じ方向」を向いて子どもとかかわれるようにしていく必要があるのです。

もちろん、園と家庭の方針が一致しないこともあるでしょう。その場合はよく話し合い、お互いに納得できる「落としどころ」を見つけることが大切です。

保護者の年齢や立場、性格は人それぞれです。相性がよい人もいれば、打ち解けにくいこともあるでしょう。でも、保護者を知る努力をするのも、保育者の仕事の一部。保護者とスムーズにコミュニケーションがとれるようになることは、子どものために役立つからです

また、それぞれの保護者と丁寧にかかわっていくと、相手のものの見方や考え方もわかってきます。そして保護者の視点から自分の保育を見直してみると、新しい発見があるものです。

ココが不安! ココがこわい! 個人面談イヤスタグラム

若い保育者が抱える「個人面談のココがイヤ!」。困ったときの対処法について、現場の先輩保育者*さんからアドバイスをいただきました。

*埼玉県内の複数のこども園でお話をうかがいました。

保護者には何を話せばいいの?

個人面談は、家庭での様子を聞くチャンス。気になることは「ご家庭ではどうされていますか?」などと聞くことで、共通の対処法を見つけることができます。保育者から話すべきことは、メモを準備しておくと安心。「~をがんばっていますよ」など、ポジティブな情報を伝えるようにしましょう。

#話を聞くチャンス
#ポジティブな情報

「頼りない保育者」と思われないためには?

保育者としての自信をつくるのは、経験+知識。まずはしっかり勉強して、知識を身につけることを心がけましょう。同じことを伝える場合でも、「なんとなくこう思うから」ではオドオドしてしまいますが、きちんとした裏づけがあるなら自信をもっていうことができるからです。そして、笑顔で接することも大切。保護者に安心感を与えられるのはもちろん、笑顔をキープすることには、自分を落ち着かせる効果もあるからです。

#経験と知識
#笑顔も大切
#落ち着け自分

どうして個人面談をしなきゃいけないの?

1対1で話す場では、園以外での子どもの様子や各家庭の育児の方針なども詳しく知ることができます。また、相談されたことに保育者が的確に応えることができれば、保護者からの信頼も深まります。保護者からの情報は、子どもの新しい一面を教えてくれるもの。保育のバリエーションを広げるのに役立ちます。

#1対1
#おうちではどうなの?
#保育者への信頼

「話しやすい雰囲気」ってどうやってつくるの?

面談の当日、いきなり打ち解けるのは難しい! だから送り迎えなど、保護者と顔を合わせる時間を有効活用することが大切です。まずは、挨拶に子どもの様子を伝えるひと言を添えることから始めてみましょう。「今日はお昼ごはんを残さず食べられたんですよ」「公園のお花を “きれい!”ってずっと眺めていました」。毎日の「ちょっとした会話」を積み重ねていくと、自然に話しやすくなっていきますよ。

#送り迎え
#プラスひと言

保護者とふたりきりで話すのが、なんだかこわいんだけど……

自信のなさや不安は、「堂々としていれば大丈夫!」などと思っても消えるものではありません。一番有効なのは、準備をしっかりしておくことです。緊張すると頭が真っ白になることがあるので、「頭に入れておく」だけでは不十分。それぞれの子どもに関する情報をしっかり書き出しておきましょう。言葉づかいや表現に自信がない場合は、話す内容を箇条書きではなく文章で書いておき、いざというときは読み上げたっていい(笑)。少しぐらい格好悪くても、一生懸命取り組んでいる姿勢は伝わります。

#準備が大切
#棒読みでもいい

話し出すと止まらない保護者、どうすればいい?

ふだんの様子から「お話好きな方だな」とわかっている場合は、面談を始めるときに「ひとり30分なので、15時までお時間をいただきます」などと「終了時刻」を伝えておきます。保護者が一方的に話してしまい、保育者がほとんど口を挟めない! ということもありますが(笑)、そういった場合は、後日あらためて面談の機会をつくるか、お迎えのときなどに手短に伝えるようにします。終了時刻になってもお話が止まらず、次の方に迷惑がかかってしまうような場合は、壁の時計をチラッと見る……なんて奥の手を使うことも(笑)。

#終わりを予告
#時計をチラリ

保護者もかなり緊張しているみたい……

個人面談では、保護者側もドキドキしていることが少なくありません。限られた時間を有効に使うためには、リラックスしてもらうことも大切。面談を始めてしばらくしても相手の緊張がとけないようなら、「どうぞリラックスしてください」などと笑顔で声をかけてみましょう。保育者側も緊張している場合は、「実は私も、とても緊張しています」などとカミングアウトしてみても。お互いさまだったのね、と安心し、場が和むこともありますよ。

#保護者も緊張
#保育者も緊張

後輩のフォロー、何ができる?

「わからないことは聞いてね」「困ったときには相談してね」といわれても、忙しそうな先輩には声をかけづらいもの。聞かれるのを待つだけでなく、後輩が困っていそうなときには声をかけるようにしましょう。そして後輩からの質問や相談には、すぐに、きちんと対応します。日ごろからよい関係をつくっておくことで、いざというときに後輩が悩みを抱え込んだり、問題をこじらせたりするのを避けられます。

#聞いてねといわれても
#ふだんが大切

保護者の質問に答えられなかったらどうしよう

事前アンケートなどで相談内容がわかる場合は、面談の前に先輩保育者にアドバイスを求め、保護者の質問にできるだけ答えられるようにしておきましょう。事前の準備ができない場合は、「私ではわかりかねますので、主任に確認して後日お返事させていただけますか?」などと対応を。わかったフリをしたり、ごまかしたりするのは避けましょう。

#仕込みが肝心
#先輩にヘルプ

苦手意識とサヨナラできる! 個人面談4つの知恵

個人面談のことを考えるとため息が出ちゃう……。そんな人にきっと役立つ、4つの知恵をご紹介します。

1 個人面談は評価される場ではありません

個人面談は、「面接」や「試験」ではありません。保護者から点数をつけられるわけではないので、「デキない人と思われたらどうしよう」なんて心配は必要なし! 面談の目的は、子どものために保護者とのコミュニケーションを深め、園と家庭で情報を共有することです。保育者は「子どものためにできること」に集中しましょう。

2 信頼感を得るために役立つポイントは4つ

  1. 園の方針を理解しておくこと。
  2. 保護者との会話は丁寧語で。なれなれしい言葉づかいや態度は、よい印象を与えません。
  3. 聞きたいこと、伝えたいことはメモしておき、わからないことは先輩に相談してから回答を。
  4. 焦らない。保護者との関係づくりには時間がかかるのがふつうです。

3 「いいにくいこと」は保護者自身に気づいてもらう

「気になること」や「できないこと」をストレートに伝えると、保護者を傷つけることも。園での様子を具体的に伝えたうえで、「おうちではどうですか?」と聞いてみましょう。保護者も同じことが気になっているなら、今後の対応を相談。保護者が気づいていない場合は、「おうちでも少し気にかけてみてください」などと伝えましょう。

4 個人面談は「苦手な人」のよい面に気づくチャンス!

1対1の面談は、保護者をよく知るチャンス。お迎えや保護者会など、人目の多い場では見せない一面が出てくることもあるからです。苦手なタイプだから……と距離をおくのではなく、相手のよいところを探すつもりで接してみましょう。保育者と保護者がよい関係を築ければ、子どもとのかかわり方もよりよいものになっていきます。

文/野口久美子
イラスト/榎本香子

『新 幼児と保育』2019年6/7月号より

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