入園・進級シーズンにおさえておきたい!保護者とのかかわり方

入園・進級の季節は、保護者との信頼関係の土台を築く大切な時期。シーン別に心得ておきたい保護者とのかかわり方を、渡邊暢子先生にアドバイスしてもらいました。

お話

渡邊暢子 先生

NPO法人 子ども家庭リソースセンター副理事長。東京都の公立保育園に37年勤務した後、保育士養成校講師、電話相談員などを経て現職。編著書に『おとなに人気のふれあいあそび保護者会・子育てひろば…おとなのためのアイスブレーキング集』(ひとなる書房)ほか。

「この先生たちなら安心」と思ってもらうことが保護者対応の最初の一歩です

入園・進級のシーズンは、子どもとの関係がスタートすると同時に、保護者との関係もスタートします。

保護者対応というと身構えてしまう人も多いかもしれませんが、不安を感じているのは子どもを預ける保護者だって同じです。特に初めて保育園を利用する保護者は何もかもが初めての経験。生まれて間もないわが子を知らない人に預けることに、不安だらけのはずなのです。そんな保護者の不安をやわらげできるだけ心の負担が軽くなるようにフォローするのも保育者の専門性です。

「この先生たちとなら、一緒に歩んでいけそう」と思ってもらうことが最初の一歩。ともに子どもの育ちを見守っていくためにも、年度始めから信頼関係のベースを丁寧に築いていきましょう。

入園説明会、入園前の面談

保護者の「わからない感」に丁寧につきあう

入園説明会や入園前の面談では、園側として伝えなくてはいけないことがたくさんあります。ですが、一度にあれもこれも伝えようとすると保護者は混乱するばかり。入園時でなくてもよいと判断できる内容については、入園してから徐々に知ってもらうという考えでいいでしょう。

初めて子どもを預ける保護者は、何を質問していいかすらわからないこともあります。その「わからない感」に丁寧につきあうことが大事。「こんなことを質問したら、あきれられるんじゃないかしら」と思わせないよう、こちらからそのつど、確認しながら進めるといいでしょう。せめて、そのハードルは低くしておきたいものです。

きょうだいを預けたことのある保護者に対しては説明しやすい面もあるのですが、変更したことに対してはより丁寧に伝えることが大切。「こうだと思っていたのに」「前はこうだったのに」という不満感は、説明不足からくることも多いのです。「今年は○○○になったんですよ」とひと言つけ加えるだけでも、「わかってくれているな」と感じ、保育者に対する印象も違ってきます。

持ち物、用意するものなどはできるだけ多様な選択肢を用意

入園までに用意する持ち物については、説明時に見本を見せる園も多いと思います。この方法は親切なのですが、一方で「これが一番いい」「同じものを買わなきゃいけない」と思わせてしまう可能性も。人によっては、きょうだいのお下がりを使いたいと思っていたり、いただきものですでに持っている場合もあります。こだわらなくてもいい部分については、できるだけ多様な選択肢を用意してあげたいものです。

「お持ちのものがあれば、聞いてみてくださいね」「○○○であれば、なんでもいいんですよ」などと、ひと言添える配慮があるとより親切ですね。

園での生活がイメージできると保護者の不安も少なくなりやすい

入園前の面談では、どんな遊びが好きか、好きなおもちゃはあるかなど、子どものふだんの様子を聞き取ります。家庭での生活から園での生活に、できるだけ不安感が少ない状態で移行させるためです。

こうした事前準備のほか、入園直後に保護者も一緒に過ごしてもらう日を設けるのもひとつの方法です。保育者はお母さんの授乳のしかたや抱き方などを知ることができますし、保護者も子どもがこの先、どんな生活をするのかをイメージすることができます。この体験をすると保護者の安心感が増すようです。

朝・夕の送り迎え

忙しくても必ず目を合わせる立ち位置が重要です。

「保育者があいさつをしてくれない」「あいさつを返してくれなかった」という不満の声は、意外と多く聞かれます。登園、降園時は人の出入りが多くなるうえに人手も足りない時間帯。保育者側にも事情があるはずですが、保護者側はそうは思いません。「無視された」「受け入れてもらえなかった」と感じてしまうものなのです。

「おはようございます」「おかえりなさい」がいえないときでも、目を合わせて頭を下げるだけで印象はずいぶん違います。言葉は交わさなくても「ああ、忙しいんだな」とわかってもらえるはずです。あいさつのタイミングを逃さないためには、立ち位置にも工夫をしましょう。入ってくる保護者の顔が見えるような位置にいれば、忙しくしていても瞬時に反応できます。

登園時、子どもが泣いていたりして、あまりいい状態ではないときには、たとえ忙しくても、きちんと抱きとめて迎え入れます。泣きやまない子どもを預けていくことに不安を覚える保護者は多いもの。出がけに怒ってしまって、後悔の気持ちを抱いていることもあるかもしれません。子どもを抱きとめることは、それらの思いも含めて「受けとめましたよ」というメッセージになるのではないかと思います。「安心して子どもを任せられる」と思ってもらうことが大事。

この場合、その後子どもがどうやって過ごしたのか、保護者は気になっているはずです。お迎えのときに詳しく伝えたいところですが、当番が代わってしまう場合は担当の保育者に伝言を頼むか、あるいは連絡帳に記すのもいいでしょう。

保育者同士の連携のよさが園への信頼につながる

当番体制の保育では、送り迎え時にクラス担任が不在ということがあります。このとき、「担任じゃないからわからない」では、保護者は納得しません。たとえば朝の迎え入れのときに保護者から聞き取ったことがあれば、必ずメモをして確実に担任に伝えます。「知らなかった」というようなことが重なると「職員間の人間関係がうまくいっていないのかしら?」などと思われることにも。これは園に対する不信感につながります。

夕方の当番に入ったときには、その間の子どもの様子をひと言伝えるだけでも違います。複数の保育者がさまざまな視点で子どもの様子を伝えてくれると、保護者は子どものことをより多角的に知ることができますし、「園全体で自分の子どもを見てくれている」と感じることは大きな安心になります。担任にこだわらず「どの先生でも安心」と思ってもらうことは、とても大事なことなのです。

連絡帳

どんな様子で過ごしていたか、短くても事実の記録を

保育中に子どもがどんな様子で過ごしているのかを知ることは、保護者にとって大きな安心材料になります。とはいえ、降園時は慌ただしいし、当番体制であればその時間は勤務外ということも。連絡帳はその補完にもなるものといえるでしょう。

「楽しそうに遊んでいました」というような保育者の主観で終わらず、一場面でもいいので、その日のエピソードを具体的に書きましょう。どんなところを見ているか、保育者として、人としての視点や感覚が伝わることも案外大切なことです。

週の間に必ず1日は、具体的な様子を記すというのでもいいと思います。クラス全員分を毎日同じように書くのは大変ですが、1日2〜3人分なら、負担もそう大きくはありません。子どもをよく見て文章にすることで、自分自身の「子どもを見る視点」も定まっていきますから、保育もますます楽しくなってくると思います。

文章を書くのが苦手という人は、子どもの言葉を並べるというだけでもいいのです。とある2歳児クラスでは、子どもの言葉や子ども同士のやりとりをクラス便りで発信していたところ、お母さんたちも家庭での言葉を連絡帳に書いてくれるようになったそうです。「これを書き始めたら、子どものことをちゃんと見るようになった」「すごく楽しくなった」と書いているお母さんもいて、とてもいい効果だなと思いました。連絡帳でこのようなやりとりができると、保護者との信頼関係もより深まるのではないでしょうか。

連絡帳で保護者が質問をしてきた場合は、必ず答えを返します。うまく返答できない内容の場合は、先輩保育者に相談したり、同僚に下書きを見てもらって意見を聞くといいでしょう。

「かみつき」「ひっかき」のトラブルは時期を見て、事前にお知らせをする

同じ年齢の子どもが過ごす保育園は、集団であるがゆえに摩擦も起きやすい場所。2歳ごろに多い「かみつき」「ひっかき」も発達上起こりうることとして、保護者には年度始めに伝えておくようにします。

最近は、春の保護者会で伝える園が増えてきましたが、クラスのお便りで伝える方法もあります。いずれにしても「なぜこういうことが起こるのか」ということと、起こった場合の対応方針を具体的に伝えることが大事。

かまれた子にはきちんと伝えるとして、かんだ子の保護者に伝えるかどうかは、園の方針を決めておきます。ただし、伝えないと決めていたとしても、子どもの口から伝わってしまうことはよくあること。発達上やむを得ないとしても、自分の子がかんでしまった場合には相手の保護者にあやまりたいと考える保護者もいます。こちらも事前に、「どういう方法がいいと思いますか?」と、保護者会のときなどに意見を聞いておくといいでしょう。その意向をもとに園の対応方針を決めるようにすると、保護者の納得も得られやすいと思います。

初めての保護者会

保護者同士が知り合うチャンス、自己紹介も楽しい工夫をポイント

年度始めの懇談会は、保護者同士が知り合うチャンスです。園からの連絡事項はできるだけ手短に。これから1年間、保護者同士が親しく声をかけあうことができるように、自己紹介をするなど工夫をしましょう。簡単なゲームを用意するなど、リラックスしてもらうための楽しいしかけを考えてもいいですね。

いまのお母さんたちは、つながっているようで、じつは結構、孤軍奮闘している人が多いと感じます。同じ条件で子育ての喜びや悩みを共有しあえるのは保育園という場所ならでは。保護者同士が仲よくすることは、子ども同士をつなげていくことにもなりますし、逆に保護者同士が対立していれば、そのひずみが子ども同士にも影響します。

転居をしない限り、子どもたちはこの地域で学校に上がり、育っていきます。保育園を介した保護者同士の関係は、子どもたちが大きくなるための「核」になる部分でもあるのです。だからこそ、できれば友好な関係を築いてもらいたいという園側のメッセージをきちんと伝えるようにします。

進級時の保護者会では、すでに保護者間の輪ができていると思います。新しく入ってきた保護者が疎外感を覚えることのないようにフォローすることも必要です。

園からの連絡事項は書面にまとめて手短に

園から伝えたいことはたくさんあると思いますが、限られた時間を有効に活用するためにも、園のルールなどの事務連絡的なことは、書面を用意しておくとスムーズ。書面にしておけば、欠席した人にも同じように伝えることができます。一方的な伝達にならないように、補足をしながら説明します。「わからないことがあれば、いつでも聞きにきてください」とひと言加えることも忘れずに。

大事なのは「一人ひとりと丁寧に向き合う」こと
困ったときは園全体で解決を

私が保育をしていたころは、「○○ちゃんのお母さん(お父さん)」とはいわずに、「○○さん」と苗字で呼ぶようにしていました。お母さんではなく、「この人に伝えたい」と思ったからです。

中には「お母さん」と呼ばれることに対して、ハードルが高いと感じる人もいます。子育ては着地点がありません。正しいか正しくないかもわからない中で子育てをしているお母さんたちにとっては、そう呼ばれることにプレッシャーに感じる人も多いのではないかと感じています。

子どもと保護者は別人格と考え、子どもを見るときと同じように、一人ひとりの保護者を理解しようとすることが大切です。そのためには、一人ひとりの話を「よく聞く」ということもとても大切なことだと思っています。

保護者の中には、子育ての不安やつらさを感じている人もいます。その不安定な気持ちが子どもに影響することがないとはいえません。具体的に子どもとのかかわり方を伝えていくことも、保育者に求められる大事な保護者支援。抱え込まずに相談してもらうためにも、関係を深めていきたいものです。

ただ、保護者の価値観は多様ですから、対応に「正解」はありません。人間関係づくりにマニュアルがないように、相手を理解する努力をしながら、そのつど、向き合い方を考えていくしかないともいえます。

保護者対応はチームの仕事です。対応に困ったときはひとりで悩まずに、園長や先輩保育者の知恵を借りるのもいいでしょう。園全体で解決していくことが肝心です。

保護者対応 番外編

伝えたいことは確実に。いまどきの「伝言ゲーム」に注意!

急なお知らせがあって各保護者に伝えようというとき、ある保護者に「もう聞きましたよ」と言われて驚いたことがあります。よくよく確認すると内容が微妙に違って伝わっていて、「確認してよかった!」とつくづく感じました。

いまはSNSなどによって、情報はあっという間に伝わります。こうしたものを使って保護者同士が情報交換できるのはいいのですが、伝言ゲームの怖さで事実が正確に伝わるとは限りません。クラスの保護者全員が共有できていないこともあります。重要なことは自分の言葉で確実に伝えることを徹底しましょう。

文/木村里恵子
イラスト/ホリナルミ

『新 幼児と保育 増刊』2019年春号より

保育者のみなさんに役立つ情報を配信中!

クリックして最新記事をチェック!

家庭連携の記事一覧

雑誌最新号