「おたよりで伝えたいのは『寄り添う』気持ち」【豊玉保育園のクラスだより#1】

特集
クラスだより・園だよりの書き方&実例集

「保育の中で心が動いた出来事を『誰かに伝えたい』『書きとめておきたい』という思いが、おたより作りの原動力になっている」と、豊玉保育園の先生方は言います。毎月のおたよりに込めている思いを語っていただきました。

協力/練馬区立豊玉保育園(東京・練馬区)
1961年開園、2021年より社会福祉法人高洲福祉会が運営委託。家庭から離れて生活する保育園の場で、子どもたちが不安なく過ごし、主体的に活動できるように真心のこもった丁寧な保育を行うことを大切にしている。0~5歳児、定員130名。

新聞形式のおたよりを紙で配布

毎月1回『とよほっと新聞』を発行しています。A4サイズ8ページの構成で、1面は園長先生が作る園だより、2面から7面までが各年齢クラスのクラスだよりになっています。8面はキッチンだより(栄養士が作成)と保健だより(看護師が作成)です。

↓こちらの記事で詳しく紹介しています。
「思わず読みたくなる 園だより・クラスだよりの工夫」

各クラスで取り上げる話題はクラスの担当同士の話し合いで決めますが、おたよりを書く人は毎月ひとり。各クラスだよりの最初に「文責〇〇〇〇」と、担当した人を記しています。月ごとに担当した人の個性が表れたおたよりになっています。

2023年4月4歳児のクラスだより。
2023年4月4歳児のクラスだより。
※個人情報に配慮して加工している部分があります。

おたよりを通じてかなえたい願いとは?

おたよりによって保護者の方が前向きになれて、それが充実した子育てにつながっていくことを願って書いています。子どもたちがもたらしてくれた保護者の方とのご縁に感謝し、ともに手を取り合い、子どもも大人も成長しあっていける喜びを、おたよりを通じて表現できればと思っています。

クラスだよりで伝えたい3つのこと

保護者が前向きになれるように、そして家庭の子育てが充実するように、何を書けばいいのでしょうか。豊玉保育園の保育者が意識していることを紹介します。

1.保護者に寄り添う気持ち
2.保育で大切にしている考えや援助の意図
3.「どの子も素敵だよ!」という思い

1.保護者に寄り添う気持ち

子育てに自信満々の保護者はいないと思います。我が子をよその子どもと比べて劣っていないかと気にしたり、ついイライラして怒ってしまったり、悩みがないように見えても、悩んでいます。今の時代、保護者のみなさんは子育てに関する知識を得る術(すべ)は持っているので、子育てに前向きになれるように保育者が支援できるのは、知識を与えることより、寄り添う姿勢を見せることと思うのです。

文例
「ゴールデンウィーク明けから子どもたちの歩く姿がぐっと変わってきたのを感じます。両手を上げてバランスをとるようにして歩いていたところから安定してたくさん歩けるようになったり、歩くスピードが速くなったり、お休み中おうちでたくさん歩く経験をしてきたのだなと思いました」

(2022年6月1歳児クラスのおたより)

文例
「先日は、お忙しいなか、個人面談にご参加いただきありがとうございました。新年度が始まり3か月、環境の変化などがあった時期でしたが、担任ふたりと保護者の方とで一人ひとりの素敵だなあと思うところを再確認し、もう少し援助してあげたいなと感じる点をいっしょに考えるなど、ありのままの姿を共有することができ、これからの成長につながる大きな一歩になったのでは、と改めて感じています」

「これからも日々の中で『こんなことがあったんですよ』『今、こんな姿があるのですが…』などと些細なことからいろいろと伝え合いながら、子どもはもちろんのこと、保護者の方々にも安心していただけるよう一日一日を過ごしていきたいと思っています」

(2022年7月4歳児クラスのおたより)

2.保育で大切にしている考えや援助の意図

何を大切に考えて保育を行い、保育園でどのような思いで子どもを援助しているのか、保育者の思いを届けたいと願っています。それが家庭の子育ての充実につながっていくと考えています。

文例
「同じ物や同じ色を集めたり並べたり、その子なりの決まりを持って遊ぶ姿は、色の認識などに加えてやがて順番を守るなどの簡単な社会のルールや秩序を認識していく姿へとつながっていきます。このような姿は生活の中で子どもたちが身につけていきます。私たちが部屋の環境を大切に考え、いつも同じ場所に玩具をわかりやすく置いて整えているのは、そのような理由もあるからです」

(2023年6月1歳児クラスのおたより)

文例
「子どもたち自身が、自分のロッカーの前に移動して、自分のカゴから着替えを出して着替えたり、脱いだ衣服を汚れ物カゴに入れるようにしたりと、少しずつ身のまわりのことで自分でできることを増やしていけるように援助していきます。たとえ大人が 9 割手伝ってもあとの1割で子どもが自分でできたと実感できるような援助を心がけています」
「自分で身のまわりのことを行っていく体験を積み重ねて、小さな自信が大きな自信につながっていくようにしていきたいと思います」

(2022年6月2歳児クラスのおたより)

3.「どの子も素敵だよ!」という思い

保育者は子どもたちのありのままの姿を受けとめています。「その子はその子のままで素敵だよ」「いろいろな姿があっていいんだよ」と、保護者とのあらゆる接点で伝えていきたいと思っています。園でも我が子が愛してもらっている、大切にしてもらっていると、知ることで保護者が園を信頼することにつながっていくと思います。

文例
「いるか組にはゲームで遊ぶこと自体が楽しい子、負けるからやりたくない…と結果を気にする子もいますが、それも4歳児の姿」

(2023年7月4歳児クラスのおたより)

文例
「ある日、A ちゃんが『うまくできない~』と言うと、B ちゃんが『見て! ここに足を引っ掛けるんだよ』と教えていました。教えてもらったとおりにやってみると、見事に成功。もっとできるようになりたくて、その後もくり返していました」
「やりたいことができるようになるまでくり返す子もいれば、鉄棒で遊ぶだけでじゅうぶん楽しい子もいます。さまざまな様子ですが、鉄棒や粗大運動遊びに熱中するきっかけになればと思います」

(2022年7月3歳児クラスのおたより)

構成/佐藤暢子

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