野菜の花を観察しよう【プランターで手軽に栽培 育てて食べよう! #2】

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プランターで手軽に栽培 育てて食べよう!
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「この花、な~んだ?」。そんなやりとりも、野菜を育てる楽しみのひとつ。野菜の生長のようすは想像以上におもしろく、驚きに満ちています。子どもたちとのコミュニケーションツールとして、一緒に楽しんでみてください

教えてくれる人

中村陽一 先生

秋草学園短期大学教授。専門は植物資源学、環境教育。保育所における飼育・栽培活動や自然験活動を実践、研究している。共書に『コンパス保育内容 環境』(建帛社)。

野菜を観察することで子どもの興味の幅も広がる

野菜や草花を育てることは、”芽が出る“”葉が開く“”花が咲く“”実がなる“といった、植物の不思議に触れ、植物を身近に感じることができます。

「植物は日々生長し、変化します。たとえば、キュウリには雄花と雌花があり、雌花の下に小さなキュウリがあって徐々に大きくなります。朝と夕方では、見てわかるほど長さが違っていることも。このような植物の生長のようすを観察することは、子どもにとっておもしろく、楽しく、驚きに満ちています」

と、中村陽一先生。こうした植物のもしろさに、気づく子どももいれば、気づかない子どももいます。もし、気づいた子どもがいれば、みんなに伝えてその情報を共有し、一緒に観察しましょう。気づかないようであれば、保育者は関心が向くように援助します。無理に押しつけるのではなく、興味や関心が向くきっかけを作ることが大切です。 「植物は動物と違って、見ているそばから動くわけではありません。せっかく植えたのに忘れてしまっているようだったら、『お花にキュウリの赤ちゃんがついてるよ』『トマトが赤くなりそうだよ』などといった言葉かけも必要です」

こんな何気ない自然体験が、科学的なものの見方や考え方の基礎となり、道徳性を養うことにもつながります。みんなで野菜を育てて、もっともっとコミュニケーション能力を高めましょう!

この花、何の花? 野菜の花も色とりどり

誰でも知っている野菜でも、花を知っている人は少ないのでは?よく観察してみると、それぞれの花の形に特徴があり、意外にきれいなものが多いのです。トマトとピーマン、味も色も全然違う野菜ですが、同じナス科なので、花の形は似ていたりします。そんな小さな発見をいろいろ探してみましょう。

花びらが丸いウリ科の キュウリ

キュウリの花は、ツルが伸びてきたころから咲き始めます。雄花と雌花がありますが、花の下のガクの部分に膨らみがあるのが雌花です。生長が早く、花が咲いて1週間ほどで収穫することができます。

まるでお星さま! ミニトマト

撮影/朝倉秀之(上2 点)

花が咲いて実となり、実が肥大して色づき完熟するまで、55日前後かかるといわれています。まず1段目(一番下)の花が咲き、株が大きくなり、それに伴って、2段目3段目と花房をつけていきます。

高貴な紫色が目を引く ナス

撮影/広瀬雅敏(左)、植松国雄(右)

6~10月の間、葉の脇に紫色をした花を下向きに咲かせます。花が大きく色も濃く、めしべよりおしべが長くなっているのが、健康に育っている証しです。花が咲いてから2~4週間後が収穫の目安になります。

次々と咲く白い小花 ピーマン

ピーマンは花が咲くと枝が2本に分かれていく性質があります。白い小さな花は、葉の脇に下向きにつき、7~10月の間観察できます。茎や葉を生長させながら同時に花を咲かせて実がなるので、長期間収穫できます。

column 野菜の起源 

私たちの食べている野菜は、もともと野生の植物で、世界各地で栽培化されたものが、長い歴史の中で日本に伝わったものです。

諸説ありますが、ナスはインド原産で、日本には飛鳥時代(7世紀)までに伝わりました。

キュウリはヒマラヤ山脈の麓、ネパール周辺が原産で、もともとは小さくて丸いカラスウリのような実をつけます。これも伝わったのは飛鳥時代(7世紀)と思われます。

トマトは南米のアンデス山脈が原産。原種はミニトマトよりさらに小さい1㎝ほどの実でした。日本には江戸時代(17世紀半ば)ごろに伝わりましたが、観賞用として栽培されただけ。明治時代にソースやケチャップの原料として大規模に栽培されるようになり、第2次大戦後になって、いまのように生食されるようになりました。

ピーマンはもともとフランス語でトウガラシを意味しますが、日本では辛みがなく、緑色で大きめのトウガラシを指します。原産地は南米ボリビア周辺。日本へは戦国時代(16世紀半ば)に伝わり、江戸時代には現在の東京・新宿周辺でトウガラシ栽培が盛んになりました。

構成/大石裕美
協力/泉町保育園(埼玉・所沢市)

『新 幼児と保育』2019年6/7月号より

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