年齢別ピックアップ!みんなのオススメ絵本〜こだま文庫 HoiClue コラボアンケート特集〜

連載
児玉ひろ美の絵本ガイド

今回のこだま文庫は、[ほいくる]とのコラボアンケート結果から最近読んだおすすめ絵本を子どもの年齢別にピックアップ!

さらに、「読み聞かせで困ったこと、難しいと感じること」の回答にはワンポイントアドバイスをつけました。

子どもとの絵本の時間をこの夏も楽しみましょう!

(この記事は『新 幼児と保育』2022年夏号に掲載されています。)

【アンケート】絵本いろいろ調査!〜どんな時に読んでる?おすすめの一冊は…?
〜『新 幼児と保育』×HoiClue〜

実施期間:2022年4月12日〜2022年4月18日

お話

児玉ひろ美さん
公立図書館司書とJ P I C(ジェイピック:一般社団法人出版文化産業振興財団) 読書アドバイザーのふたつの立場から子どもの読書推進活動を展開。幼稚園・保育園から中学生まで、お話し会やブックトークの実践とともに、成人への講座や講演は年100回を超える。近年は大学にて「児童文化」「絵本論」の講義を担当し、「2021・2022・2023 年度ブックスタート赤ちゃん絵本選考委員」でもある。著作に『0~5歳子どもを育てる「読み聞かせ」実践ガイド』(小学館)などがあり、雑誌やW E B でも活躍中。

年齢別!みんなのおすすめ絵本【0〜3歳児】

0・1・2歳児

『もこ もこもこ』

作:谷川 俊太郎 絵:元永 定正
文研出版

・「子どもたちもまねをすることができ、何回読んでも飽きることなく楽しめる」
(0歳児クラス/企業主導型保育事業)
・「どの年齢でも集中して見ることができる。心が落ち着かないときなどに読むようにしている」
(全学年/私立認可保育所)

子どもたちと一緒に、先生ご自身も楽しまれたことでしょう! コメントからは、元気な声や満面の笑顔が浮かんできます。
声に出したり、手をパチンとしたり、指さしをしたり。
0歳児から幅広い年齢で、それぞれのできること総動員で楽しめる1冊ですね。

『とこちゃんはどこ』

作:松岡 享子 絵:加古 里子
福音館書店

・「迷子の子の心理、親の心理が描かれて、大人も楽しい。絵をずっと見ていられる」
(2歳児クラス/企業主導型保育事業)

大人の心配をよそに、「とことこ」行ってしまうとこちゃん。
子どもたちは不安になったり、心配したり、指さしをしたりし、絵本に見入ります。
見つけるのが苦手な子でも楽しめるよう、ページをめくる前には必ず、みんなでとこちゃんの居場所を確認しましょう。

『だるまさんが』

作:かがくい ひろし  
ブロンズ新社

・「自分の体に興味を持つきっかけになるため。絵本のまねをして髪の毛をつまんだり、小さな手を差し出しているのがかわいい」
(1歳児クラス/私立認可保育所)
・「どてっ、など、リアクションがまだ難しいものもありますが、最後のニコッの笑顔は伝わる」
(0歳児クラス/私立認可保育所)

読み手が10人いれば、10人がそれぞれの「だるまさんが~」の読み方やリズムで楽しまれていることでしょう。
もちろん、子どもたちのリアクションも子どもたちの数だけあります。
特に0歳児は読むたびに、子どもの成長を感じることができるのも魅力です。

3歳児

『あおいふうせん』

作:ミック・インクペン 訳:角野 栄子
小学館

・「しかけがたくさんあって楽しい」
(3歳児クラス/公立認可保育所)

想像の世界や未体験の物事を楽しめるようになると、絵本の選択肢もぐっと広がります。
美しさや造作のおもしろさが味わえる作品なども、積極的に読んであげたいものです。
本書は1990年ボローニャ国際児童図書展にて、子どもによって選ばれるエルバ賞受賞作品です。

『ふしぎなキャンディーやさん』

作・絵:みやにし たつや
金の星社

・「ブタと子どもたちが大好きなオオカミというシチュエーションがおもしろく、オオカミから逃げるブタにドキドキワクワクが楽しめる本です」
(3歳児クラス/私立認可保育所)

不思議なことや怖いことを楽しめるようになる3歳児。
色によって効果が違うキャンディーにワクワクすることや、ピンチになったブタの様子にドキドキすることを、友達と一緒に体験として楽しみます。
読後には、キャンディー屋さんごっこが始まるかもしれませんね。

『すすめ!うみの きゅうじょたい』

作:竹下文子 絵:鈴木まもる
金の星社

・「このシリーズは車が好きな子どもが喜ぶ。作中の、どうする?という問いかけに子どもたちが話の展開を覚えて答えるようになり、読んでいて盛り上がる」
(3歳児クラス/公立認可保育所)

できることが増え、危険なことや見知らぬ世界に興味を持ち始める3歳児。
『すすめ!きゅうじょたいシリーズ』は、そんな冒険心に応えるような絵本です。
ピンチのたびに「どうする?」と問いかけがあることで、子どもたちも救助隊メンバーと一緒に活躍できるのですね。

読み聞かせでの困った!難しい!

「興味のない子にどう対応すればよいかわからない。ほかの子も集中できなくなり、絵本を見る雰囲気ではなくなってしまうことがある」
(公立認可保育所)ほか

【こだまさんからのアドバイス】
読み聞かせに限らずどんな遊びでも、苦手な子や経験の少ない子がいると思います。
全員が同じようには集中できないでしょう。
そんなときは苦手な子や経験の浅い子に合わせて絵本を選んでみましょう。
興味のある子どもも一緒に楽しんでくれると思います。


「絵本の文の言い回しが難しい、理解しにくいなーと思ったときのわかりやすい表現の仕方がわからない」
(私立認可こども園)ほか

【こだまさんからのアドバイス】
その言葉の意味するものが描かれているのであれば、読みながら絵を指さすことも一案ですが、できれば選書の見直しをおすすめします。
子どものための出版社の作品は、対象年齢に見合う言葉や表現が選び抜かれています。
その作品が聞き手の子どもにとって難しいと感じるのであれば、ほかにもたくさん絵本はあるのですから無理をしてまで読む必要はありません。無理をしないことが一番です。
でも、案外、子どもたちはお話の流れや前後の状況から理解できていることも多いようです。


「声色は変えないほうがいいといわれていたが、ついつい感情が入ってしまい、声色を変えてしまう」(公立認可幼稚園)
「登場人物が多くて声色を変えるのが難しいとき」
(私立認可幼稚園)

【こだまさんからのアドバイス】
結論から先にお伝えします。声色を使って演じる必要はありません。
子どもが絵本の世界を楽しみ、自由に想像を膨らませていくためには、読み手は印象に残らないほうがよいのです。
大切なことは、絵本の楽しさを子どもと一緒に、味わいながら読むこと。
自然な心の動きで楽しそうになったり、心配そうになったり、言葉にリズムが生まれたりするのは自然なことですから、その気持ちのままに読んでください。個人差はあることでしょう。「私は演技派」と思う方は、少し意識をして抑え気味に読んでみてください。

年齢別!みんなのおすすめ絵本【4〜5歳児】

4歳児

『わんぱくだんのりゅうぐうじょう』

作:ゆきの ゆみこ、上野与志  絵:末崎 茂樹
ひさかたチャイルド

・「冒険ものなので自分たちでも再現できて楽しい」
(4歳児クラス/私立認可保育所)
・「わが子が好きなので、園の子も気にいるかと思い読んだら、大ハマり。子どもが冒険する内容なので、自分たちも冒険してる気分になるのか、引き込まれるように見ています!」
(5歳児クラス/公立認可保育所)

運動機能の発達や好奇心の広がり、友だちとの協力など、4~5歳児の成長のエッセンスがたっぷり詰まった『わんぱくだんシリーズ』は、本書で24冊目。
15年に渡り読み継がれているため、季節や行事に合わせて絵本を選べる心強さも、その魅力のひとつですね。

『むしたちのうんどうかい』

文:得田 之久 絵:久住 卓也 
童心社

・「いろんな虫が出てきて運動会をするので、子どもが“○○はこんなふうに玉入れするんだね” “玉がダンゴムシだー”などと楽しそうに話していた」
(4歳児クラス/私立認可こども園)

子どもたちの大好きな虫の運動会なのですから、どれほど盛り上がって読んだことでしょう! 
楽しげに話をする子どもたちを、先生がおおらかに受けとめ、読み聞かせた様子がうかがえます。
ときには(絵本によっては)、会話を楽しみながら読む時間も大切ですね。

『バルバルさん』

文:乾 栄里子 絵:西村 敏雄
福音館書店

・「お父さんが美容師さんの男の子が、続きを読んでほしいと楽しみにしていました」
(4・5歳児異年齢クラス/公立認可保育所)

将来の夢を考えたり、身近な大人に憧れを抱いたりし始めると、職場や職業を舞台にした絵本が気になるようですね。
近年は、さまざまな職種で、主人公が男女ともに登場する作品が増えてきました。
絵本で憧れのお仕事(お店屋さん)ごっこもできそうです。

5歳児

『だじゃれ 日本一周』

作:長谷川 義史
理論社

・「ダジャレで大笑いしてくれる」
(5歳児クラス/公立認可保育所)

ダジャレやナンセンスなどの、言葉で遊ぶ絵本は、読み手が大真面目に読むことがコツです。
コメントをくださった先生はどんなふうに読まれたのでしょう? 楽しそうですね。
言葉で遊ぶ絵本を楽しめるのは、言葉の理解や語彙(ごい)力もついてくる5歳児ならでは、です。

『せかいでいちばんつよい国』

作:デビッド・マッキー 訳:なかがわ ちひろ
光村教育図書

・「ウクライナの戦況がテレビで流れる中、感性豊かな子どもたちには、なぜ戦っているのか納得できない様子。漠然と不安になるくらいなら正面きって戦争がいかにつまらないかを伝えることにした。子どもたちは真剣に聞いていました。理解したかどうかは不明。でも、力で勝ち得るものなどないことは、ふだんの自分たちの体験を通じて感じ得た様子でした」
(5歳児クラス/公立認可保育所)

戦争や平和をテーマにした絵本が話題になっています。
映像報道の影響は子どもたちにとっても小さくないことでしょう。
戦争の伝え方はご家庭によってさまざまだと思いますが、こんな今だからこそ、子どもたちには平和であることの大切さを、絵本を通して感じとってほしいと願います。

『めっきらもっきら どおん どん』

作:長谷川 摂子 画:ふりや なな
福音館書店

・「表紙を見せただけで、静かになった」
(5歳児クラス/私立認可保育所)

「私もこの絵本が好き!」と、懐かしく思う先生もいらっしゃることでしょう。
どれほど、たくさんの子どもが、不安な感じの表紙画に惹きつけられ、タイトルの不思議なおまじないに耳を傾けたことか! 
30年以上読み継がれている、夏の定番絵本ですね。

異年齢クラスほか

『しろくまちゃんのほっとけーき』

作:わかやま けん、もり ひさし、わだ よしおみ
こぐま社

・「ホットケーキを作る工程をまねしながら読むことで、集中力が高まった」
(障がい児の発達支援施設)

なんといっても、食べ物の絵本は、読み手も聞き手も一緒に、幸せな気持ちにしてくれます。
ましてや、ふわふわのホットケーキであればなおさらのこと!
ケーキの焼ける音を表すオノマトペを読むたびに、いいにおいが漂ってきそうな気がします。

『ちか100かいだてのいえ』

文:いわい としお
偕成社

・「これ読んで!と子どもからのリクエストが多い」
(3・4・5歳児異年齢クラス/私立認可保育所)

ここ数年、新築の公共図書館では、この絵本のビッグブックを収める専用棚を用意するほど、大人気のシリーズ。「いえ」に始まり「ちか」「うみ」「そら」「もり」全部で5巻。
各年齢それぞれに、子どもたちとの、楽しいエピソードが生まれていることでしょう。

読み聞かせでの困った!難しい!

「子どもたちが絵本の場面に対して話しかけて止まらなくなってしまうとき」
(私立認可保育所)

【こだまさんからのアドバイス】
絵本の世界を楽しんでいるのですね。制したり、答えたりせず、絵本をしっかり見せたまま、笑顔でうなずき、しばらく待ってみましょう。
やがて自然に収まります。そのタイミングで静かにページをめくって読み続けてください。
どうしてもお話が止まない子には「あとでね」と声をかけ、読後に必ず「あとで」を実行して話をよく聞きます。
何回かくり返すうちに、子どもは「読み聞かせの時間」を理解することでしょう。


「図鑑やコレクション本など、読み聞かせに向いてない本を選んできたとき」
(私立認可保育所)

【こだまさんからのアドバイス】
読み聞かせというより、会話を楽しむことを目的にしてみてはいかがでしょう? 
子どもは興味・関心のある物事はすぐに覚えますから、章ごとのタイトルやモノの名称などは、正確に読んでください。
図鑑やコレクションから子どもの好きなものがわかったら、それを主題にした科学絵本を読み聞かせてみるのもおすすめです。


「絵本を上下に振ったりたたいたりする絵本のセリフに困る」
(障がい児の発達支援)

【こだまさんからのアドバイス】
ここ数年、まるでタブレットやゲーム機器のように見立てて遊ぶ絵本が増え、子どもたちに大人気ですね。
言葉が「セリフ」になっている作品は、素直にそのまま演じるのがコツです。
思いっきり楽しんでください。
どうしてもセリフが苦手な方は、子どもたちにも参加してもらってはいかがでしょう?

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