幸せであること【児玉ひろ美のこだま文庫】
- 連載
- 児玉ひろ美の絵本ガイド
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記憶の隅にある懐かしい1冊、気になりながらも読まないままの1冊、まだ出会っていない1冊。ここは、そんな本を見つけるためのオンライン図書館です。今回は、年末年始を素朴な幸せで包んでくれるようなクリスマスとお正月の絵本。温かな気持ちでこの時期を楽しみましょう。
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児玉ひろ美さん
公立図書館司書とJPIC(ジェイピック:一般社団法人出版文化産業振興財団)読書アドバイザーのふたつの立場から子どもの読書推進活動を展開。お話会の実践のほか、近年は大学にて「児童文化」「絵本論」の講義を担当。「2021・2022・2023年度ブックスタート赤ちゃん絵本選考委員」。著作に『0~5歳子どもを育てる「読み聞かせ」実践ガイド』(小学館)などがあり、雑誌やWEBでも活躍中。
目次
幸せであること
年末年始は行事も多く、子どもも大人も気持ちが華やぐ季節です。なかでもクリスマスの行事は準備の期間も含め、子どもと一緒にできる楽しいことがたくさん! 最近は公共の施設でも、宗教的な意味合いよりも、世界中の人々が同じ日に、やさしい気持ちで身近な人への感謝や幸せを祝う、世界最大級のイベントとしてクリスマスが定着しているようですね。
では、世界ではどんなふうに、その日をお祝いしているのでしょう? クリスマスの行事は子どもたちが具体的に異文化に触れる、よいチャンスです。『クリスマスまであと九日』はメキシコの習慣を描いた作品です。メキシコではクリスマスの9日前から、毎晩家ごとに、子どもが主役の行事「ポサダ」が始まります。幼稚園に通う女の子セシは、その年ついに「ポサダ」をしてもらえることになりました。
「あたしのポサダをしてもらえるなんて!」
幼い子のあこがれや喜び、子どもの幸せを地域で祝うメキシコの風土が、こまやかな絵と文章から伝わってきます。私は図書館司書になった初めての冬に、この絵本に出会いました。正直、表紙も地味で、文字も小さく、本文は46ページもあり…。とても読み聞かせ向きとはいいがたい作品ですが、クリスマスを、子どもの幸せを願う素朴な習慣として位置づけることへの、素直な感動と新しい視線をもたらしました。そんな「ポサダ」って、いったいどんな習慣なのでしょう? 答えはどうぞ、絵本をご覧ください。日本では1974年(原書1959年)から読み継がれている超ロングセラー作品です。
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M.H.エッツ&A.ラバスティダ/作
たなべ いすず/訳
冨山房
「ゆきの ふる ひは たいへんだ
このにんじんは
だれかに あげよう」
やわらかな明かりを灯した部屋で、満ち足りた表情のひつじは、人参を届けてくれた「だれか」と、これから人参を届けるもうひとりの「だれか」を思い、人参を抱き締めます。ロシア民話より、と付された『くりすますの おくりもの』は、寒いクリスマスの1日が、動物たちがそれぞれにだれかを思う気持ちで満たされています。クリスマスに限らず、子どもたちの感謝や幸せを願う気持ちを育てるためには、まずは子ども自身が満たされ、幸せであること。この絵本を見ていると、シンプルにそう思います。
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木村由利子/文
松村雅子/絵
至光社
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「じめんを ごそごそするのは ごめんだね。
いつものように くもで いく」
たつは、イヤなものはイヤといい、いつもの雲にじゅうにし乗って神様のもとへ…。『十二支のはじまり』はお正月が来るたびに読む1冊です。世の中がどんなに変わっても、巡ってくる十二支。それぞれが自分の行き方で神殿に出向いたのちは、決められた順どおりに年神に。この単純さが幸せ、と思うのです。十二支の絵本はさまざまなものがありますが、私のおすすめはこの1冊。
スマートフォンが急速に普及したいま、世界は手のひらの中ですべてがわかりそうな勢いですが、絵本を通して、ほかの国や民族が大切にしていることを知ることもできるのです。
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岩崎京子/文
二俣英五郎/画
教育画劇
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12月と1月のおすすめ絵本|テーマ「クリスマス」と「お正月」
クリスマス
0歳から2歳向け
『いち・にい・サンタ!』
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ほるぷ出版
穴に指を入れて動かすしかけ絵本。「いち・にい・サン・タ!」で腕をゆらゆら、おしりをふりふり、最後はジャンプで「いーち、にーい、サーンタ!!」。
『クリスマスの おばけ』
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ポプラ社
「クリスマスのひは うれしいなー」。園でもおうちでも楽しいことがいっぱいあって、ニコニコしながら眠ります。でも、おばけの子どもはどうしてる?
2歳から4歳向け
『ぼくたちの プレゼントは どこ?』
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木坂 涼/訳
好学社
クリスマスの朝、一番に起きてきたのは2ひきのねずみたち。サンタさんが置いていった、たくさんのプレゼントをのぞき込んではキョロキョロと…。
『クリスマスの三つのおくりもの ふたつのいちご/ズボンのクリスマス/サンタクロースとれいちゃん』
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福音館書店
手のひらサイズの小さな絵本がケースに3冊。れいちゃん、もっくん、かすみちゃんの3人きょうだいそれぞれが主人公のクリスマス物語3部作です。1冊ずつでも購入できます。
4歳から6歳向け
『せかいいちしあわせな クマのぬいぐるみ』
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サム・アッシャー/絵
吉上恭太/訳
徳間書店
メアリー・ローズとぬいぐるみのウーウは、いつも一緒です。ところが、ウーウは電車に置き忘れられ…。長いときを経て、クリスマスに奇跡が起こります。
『リトルサンタ』
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BL出版
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パパはサンタクロース。世界中の子どもたちが楽しみにしているクリスマスを、ぼくは毎年ひとりで過ごす。「今年のクリスマスはパパと一緒にいられますように」。イブの朝、パパは転んで骨折を…。こんなことをお願いしたんじゃないのに! プレゼントを配れなくなったパパの代わりに、息子のぼくが出かけることにします。
『ルーちゃんとクリスマスツリー』
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くわはら まい/絵
福音館書店
ルーちゃんは、しっかり者のお姉ちゃんにあこがれています。イブにお姉ちゃんが熱を出しました。看病するお母さんの代わりにルーちゃんはお使いへ。
『クリスマスツリーをかざろう』
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ジャーヴィス/絵
なかがわ ちひろ/訳
BL出版
ほっそりのっぽの木、まんまるふとっちょの木。とがっている木…どれにしようかな? こんなふうにツリーを飾ることができたら楽しいでしょうね。
お正月
4歳から6歳向け
『お正月が やってくる』
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ポプラ社
東京に実在する、お正月飾りを売る「なおこさん」の家族の年末年始の暮らしです。お正月を迎える街や人の、喜びや活気を感じることができます。
異年齢
『おしょうがつの かみさま』
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大日本図書
家中をきれいにお掃除し、お正月飾りを準備して、お正月の神様を迎えます。さあ、今年の神様は、どんなお姿でいらっしゃるのでしょう?
『おもち!』
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村上康成/絵
小峰書店
おもちつきが始まるよ!ぺったんぺったんしていると…おもちがうさぎになっちゃった。次はなにに変身するのかな?手拍子でもちつきに参加しましょう。
『新 幼児と保育』2020年12/1月号より
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