0・1・2歳児向け「あいさつ」がテーマの絵本【児玉ひろ美のこだま文庫】

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JPIC読書アドバイザー

児玉ひろ美

ここは、みなさんの記憶の隅にある懐かしい1冊や気になりながらも読まないままの1冊、そんな本に再び出会うためのオンライン図書館です。今回紹介するのは、0・1・2歳児向けのあいさつをテーマにした絵本。保育室に不安と緊張感がただよう季節。まずは、朝の「おはよう」から始めてみましょう。読み聞かせ・選書のポイントも参考にしてください。

児玉ひろ美さん

JPIC読書アドバイザー、台東区立中央図書館非常勤司書。日本全国を飛び回って、絵本や読み聞かせのすばらしさと上手な読み聞かせのアドバイスを、保育者はじめ親子に広めている。大学にて「児童文化」の講師を担当するなど、幅広く活躍。著書に『0~5歳子どもを育てる「読み聞かせ」実践ガイド』(小学館)。

新しいスタートにぴったりの1冊

『おはよう』

いもと ようこ/絵・文
至光社

春は、だれもがドキドキしながらスタートします。初めての保育室に緊張した様子の子どもたち、進級してお兄さんお姉さんになった子どもたち。でも、だれよりもドキドキしているのは、初めてわが子を人に託す保護者かもしれません。そんなとき、子どもが保育者からの「おはよう」にニコッとしたり、笑顔で「おはよう」と返したりしたら、その日の一歩を、順調に踏み出せた安心感が広がりますね。

『おはよう』は、子猫の坊やが元気に「おはよう」をいえるまでの、決心とためらいを、子どもの気持ちそのままに描いた作品です。かつて読み聞かせに通っていた園で、途中入園のための見学で緊張気味の保護者の方と乳児、保育中の0・1歳児が一緒の場で読んだときのことです。子猫が勇気を振り絞って「おはおはおは〜〜」と声を出すシーンでは、見学の乳児さんも、じっと絵本に見入っていました。

一方、子猫を応援するように見ていた1歳児のTちゃんは、待ちきれなくなったのでしょう。「おはようだよ、おはよう〜」と、大きな声で子猫に声をかけました。すると、それまで絵本に見入っていた乳児が、声のしたほうへ満面の笑みで体をひねり、応えるように「おおー、おおー」。途端に部屋には和やかな笑いがあふれ、お母さんの顔にも満面の笑みが広がりました。

0~1歳児向け絵本

『おはよう』

まつい のりこ/作・絵
偕成社

言葉のない、小さな絵本です。「おはよう」「きれい きれい」「もぐもぐ」「いない いない」など、描かれたしぐさに合わせて、子どもと自由な会話を楽しむことができます。

『ばいばい』

まつい のりこ/作・絵
偕成社

上の『おはよう』と同シリーズです。ページをめくると、動物たちが次々に「こんにちは」「ばいばい」をくり返します。お辞儀をしたり、手を振ったり、くり返して遊びましょう。

『どうぶつ絵本 はじめまして』

グザビエ・ドゥヌ/作
小学館

白黒の動物の絵にアクセントの色づけが美しい絵本です。表紙は柔らかな素材で、各ページにあいた穴から次ページの絵がのぞくなど、工夫がいっぱい。子どもは穴に指を入れたり、のぞいたり、さまざまに楽しむことでしょう。「ねこが ニャンニャン とり チュンチュン」と、文章も軽快です。

『ノンタン おはよう』

キヨノ サチコ/作・絵
偕成社

赤ちゃん版ノンタンは、おすわりで、子どもを抱いて読むのにちょうどいいサイズ。「おはよう」「いただきます」「あそぼ」など、元気に一日を過ごす言葉が詰まっています。

『おはようのえほん』

いしかわ こうじ/作・絵
童心社

太陽が「あさですよ」と声をかけると、動物たちが元気にあいさつして、しかけが縦に開きます。ここで紹介する一番小さな絵本ですが、しかけを開くと大きく変身します。

『おでかけ ばいばい』

長谷川摂子/文 柳生弦一郎/絵
福音館書店

「おでかけ おでかけ ぴたこん ぴたこん」「いってらっしゃーい ばいばーい」。朝、こんな言葉でおうちの方を見送ることができたら、親子ともども、よい一日になりそうですね。くり返し、かけ合い言葉で遊べる絵本です。まだ歩けない子は保育者が抱っこで、お出かけ遊びをしてみましょう。

『ととけっこう よが あけた』

こばやし えみこ/案 ましま せつこ/絵
こぐま社

同名のわらべうたをもとにした「めざましうた」の絵本です。巻末に楽譜も載っていますが、歌わずとも楽しめます。動物を子どもの名に置き換えると、子どもが笑顔になります。

『ごあいさつ あそび』

木村裕一/作
偕成社

もう30 年も子どもたちと「ごあいさつ」をし続けているしかけ絵本です。手前に開いていくことで、次々に動物たちが「こんにちは」と、お辞儀をしてごあいさつ。あ、怪獣さんもいますよ。

0〜1歳児への読み聞かせアドバイス

本来、0〜1歳児への読み聞かせは、1対1が基本です。それでも、保育の現場では、子どもがおすわりをできるようになると、少人数での読み聞かせを行うことが多いようです。まずは、絵本を「読む」ということにはこだわらず、絵本にかかわる心地よい経験を重ねることが大切。

その積み重ねの中で、子どもと大人との信頼関係を築くことができます。そうして、子どもが読み聞かせの時間に、楽しさや喜びを感じることができれば、子どもにとって、絵本は「よいもの」、絵本を読んでもらう時間は「好きなこと」になっていくことでしょう。

選書のポイントはいくつかありますが、大切なことを、3つ挙げてみましょう。

  1. 色や絵、言葉がシンプルであること。
  2. 絵本の大きさが、子どもの視野に収まること。
  3. 読み手が声に出して読みやすいと思えること。

今回は、入園したての0〜1歳児が「おはよう」「ばいばい」など、登園・降園時の声かけになじむ「あいさつ絵本」を中心に、8冊選んでみました。まずは、声に出して読むことで、ご自身の言葉に乗りやすい作品を探してみましょう。0〜1歳児の読み聞かせは、会話と遊びの延長と考え、自由に楽しく読んでください。

1~2歳児向け絵本

そらまめくん こんにちは

なかや みわ/作
小学館

『そらまめくん あかちゃん絵本』3冊セットの1冊。てくてく、お出かけしたそらまめくん。ぴょこ
りと顔を出したみみずさんと「こんにちは!」。元気にごあいさつをします。

『ばいばい またね』

さとう わきこ/作・絵
金の星社

遊んだひよこちゃんが帰るときも、ねこちゃんが行ってしまうときも、「ばいばい またね」。再会を期待するやさしい言葉のくり返しは、おまるにしたうんちにも!

『おはよう・おやすみ』

シャーロット・ゾロトウ/文 パメラ・パパローン/絵
くどう なおこ/訳
のら書店

子どもの心をのぞく窓を持つといわれる作家・ゾロトウによる、一日の始まりと終わりを歌うように描いた作品です。絵本をひっくり返すことで、絵本のどちら側も表紙になります。

『こぐまちゃん おはよう』

森 比左志、わだ よしおみ、わかやま けん/著
こぐま社

こぐまちゃんの一日を描いた作品ですが、もう50年以上読み継がれています。多様な変化の中でも、子どもの一日は、変わらないのですね。あいさつもしかり。こぐまちゃんの一日を追いながら、必要なタイミングで声に出していいましょう。大きな声であいさつするとスッキリします。

『あさだ おはよう』

三浦太郎/作・絵
童心社

『あかちゃん ととととと』シリーズの1冊。「おはよう」絵本の中で一番元気の出る絵本。野菜の家族が次々手足を伸ばして目覚めます。「おめめ ぱっちり あさだ おはよう!」

『あいさつ』

いもと ようこ/作・絵
金の星社

元気にごあいさつできるかな? 朝だれかに会ったら、「おはよう!」。出かけるときは「いってきまーす」。見送るときは「いってらっしゃーい」。たくさんのあいさつが詰まった絵本。

『おはようミッフィー』

ディック・ブルーナ/作
講談社

厚紙小型のお出かけ絵本です。おはようから、おやすみまでの定番的な内容に答えて遊べます。途中「あそぼ」のシーンがありますが、さあ、子どもたちはどう応じるでしょう?

『おひさま さんさん おはようさん』

なかじま かおり/作
岩崎書店

作品の言葉は「4・4・5調」の定型詩のリズムでできています。読み聞かせもリズムを意識して読むと、読み手は読みやすく、聞き手も非常に心地よいリズムになります。

1~2歳児への読み聞かせアドバイス

まだまだ信頼関係を築くことが大切なこの時期、特に新しく担任になった方や、1歳児入園の子どもとは、1対1もしくは少人数相手が基本です。0〜1歳児のころ親しんだ、子どもにとって経験がある絵本を読むのも一案です。新入園児については、ご家庭でお気に入りの絵本を教えてもらい、園でも読んでみましょう。子どもは「好きな絵本を読んでくれる人は、安心な人」と思うようで、図書館の仕事でも大いに役立ちました。

今回の選書は、短く単純ですが、0〜1歳の「あいさつ絵本」よりはストーリーがあり、身近な事柄が登場する「生活絵本」としての要素を意識して選びました。この時期は、子どもの発達によってさまざまな反応があり、楽しみ方も変化しますし、言葉のくり返しや、あいさつの絵本は長い期間楽しめます。

また、ほかの保育者が読み聞かせている時間は、客観的に子どもの成長を見つめるよいチャンスにもなります。一人ひとりの反応に、少し留意してみてください。「以前より集中して読み聞かせを聞けるようになりました」「絵本の言葉を上手に遊びの中で使いこなします」など、小さな発見でも保護者と共有できると、それも保護者の安心につながります。

『新 幼児と保育』増刊『0・1・2歳児の保育』2022春より

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