“いろいろな家族のかたち”を描いた絵本【児玉ひろ美のこだま文庫】

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児玉ひろ美

ここは、みなさんの記憶の隅にある懐かしい1冊や気になりながらも読まないままの1冊、そんな本に再び出会うためのオンライン図書館です。今回は、〝いろいろな家族のかたち〞を描いた絵本を集めました。

児玉ひろ美さん

JPIC読書アドバイザー、台東区立中央図書館非常勤司書。日本全国を飛び回って、絵本や読み聞かせのすばらしさと上手な読み聞かせのアドバイスを、保育者はじめ親子に広めている。大学にて「児童文化」を担当するなど、幅広く活躍。著書に『0~5歳子どもを育てる「読み聞かせ」実践ガイド』(小学館)。

家族のかたち

『ふたりママの家で』

絵・文/パトリシア・ポラッコ
訳/中川亜紀子
サウザンブックス社

絵本は子どもだけのものではなく、大人のためのものでもあります。WEBでもたくさんの「大人向け絵本」が紹介され、最近は男性向け雑誌などでも特集が組まれるようになりました。絵本は、文学が膨大な文字数をかけて表現してきた物事を、絵と磨かれた短い言葉で一瞬にして表現することを可能にします。だからこそ、絵本にはその時代の空気を感じさせる力があるのです。

「生まれてすぐのわたしが、どうやってこの家に来たか。
その話になると、ママたちは目をキラキラさせて、思いっきり、にっこりする。」

『ふたりママの家で』の主人公「わたし」には、2人のママと弟と妹がいます。家族5人には、いわゆる血のつながりはなく、肌の色も髪の色も違います。そして、その生活には特別な事件や出来事はありません。みんなで食事を作り、食べ、歌い、笑って暮らす。ふつうの家族の日常です。

作家パトリシア・ポラッコは、「ふたりママ」の家が、典型的といわれる家族と「ちがい」があっても、決して「まちがい」ではないことを、伝えているのです。ポラッコは、1990年代に自らのディスレクシア(学習障がいのうち、読み書きがうまくできない状態)を作品に描き、その理解を広げた作家として知られています。

『タンタンタンゴはパパふたり』

文/ジャスティン・リチャードソン&ピーター・パーネル
絵/ヘンリー・コール
訳/尾辻かなこ、前田和男
ポット出版

「ロイとシロを見ていて、飼育係のグラムジーさんは気づきました。
『この子たちは、きっと愛しあっているんだ』」

動物園には、毎日いろんな家族が動物たちを見にわんさかやってきます。そして、人間の家族と同じように、動物たちにも家族がいます。ペンギンたちは毎年その季節になるとカップルが誕生し、卵を温め家族となります。

そのカップルのひとつ、ロイとシロ、2羽のペンギンはどちらも男の子でした。『タンタンタンゴはパパふたり』は、ニューヨークのセントラル・パーク動物園での実話です。2羽の愛情に気づいた飼育員のロブ・グラムジーさんは、2羽に放置された卵の世話をさせます。そして、ヒナ(タンゴ)が生まれました。

タンゴとその両親はそれからもずっと、ほかの家族と同じように、仲よく寄り添って暮らしています。

『いろいろ いろんな かぞくの ほん』

文/メアリ・ホフマン
絵/ロス・アスクィス
訳/杉本詠美
少年写真新聞社

「おとうさん、おかあさんとくらしている
こどもが おおいけど」

私自身も含め、日ごろ意識していながらも、まるで接頭語のように使ってしまう言葉に「ふつうは〇〇だが」があります。『いろいろ いろんな かぞくの ほん』は、そんな小さな物差しを一つひとつ丁寧に外してくれる1冊です。

家族のかたちに始まり、学校、仕事、休日、服装、趣味などの暮らし方まで、○○が多いけど、○○もある。○○とは限らない。かつての子どもの本においては、絶対の安定感を求められていた部分に、心地よい振れ幅を与えてくれます。

「ロイとシロがんばった! たまご、(生まれて)よかったねぇ」

「タンゴ、パパふたりでいいよね」

先にご紹介した『タンタンタンゴはパパふたり』を大好きなお父さんに読んでもらった4歳と5歳の姉弟の会話です。このふたりが恋をするころには「多様な性のあり方にふれる絵本」というメッセージはいらなくなるのかもしれません。

8月と9月のおすすめ絵本

テーマ「おばけと遊ぼう」

『 おばけのかくれんぼべんとう』

0歳から2歳向け

文/木坂 涼
絵/いりやま さとし
教育画劇

わんぱくおばけの3きょうだいは、おばけママに頼まれ、お弁当のおかず集めに出かけます。ところが、ごちそうの森でかくれんぼ。さあ、どこに隠れているのでしょう?

『おばけと おやすみ』

2歳から4歳向け

作/新井洋行
くもん出版

おばけたちは、おばあちゃんの家にお泊まりに。夜になったら、家にいるおばけたちを寝かせるお手伝いをしましょう。なでて、ゆらして、あくびして…。参加型で楽しめます。

『おばけのまめ』

2歳から4歳向け

絵・文/accototo ふくだとしお+あきこ
ポエムピース

おばけからもらった、おばけの豆を育て、お鍋でぐつぐつぐつ。ポチがパクリと飲みこむと、あらあらおばけになっちゃった。続けてパパもママもぼくもパクっ! すると…。

『おつきみおばけ』

2歳から4歳向け

作・絵/せな けいこ
ポプラ社

泣いている小さなうさぎちゃんのために、親切なおばけちゃんはお団子に化けます。すると「おいしそうなおだんご!」と、うさぎちゃんはがぶり! 「きゃあ! いたいよー」

『おばけのえんそく』

4歳から6歳向け

作/西平あかね
福音館書店

今夜はおばけ保育園の遠足です。目指すは、うみぼうず浜。そこで、うみぼうずさんたちと一緒に、まっくらやみ鍋を作ったり、昆布引きをしたりして遊びます。

『なきむしおばけ』

4歳から6歳向け

作・絵/なかのひろたか
福音館書店

おもちゃの取り合いで泣いてしまった、くんちゃん。お兄ちゃんは「かってにないてろ」と、行ってしまいます。すると「うまくいったな」と、だれかの変な声が! だれでしょう?

『おーい おばけ』

4歳から6歳向け

作・絵/末崎茂樹
ひさかたチャイルド

「そうだ、あした おばけをつかまえにいこう!」。ぼくは朝ごはんをいっぱい食べて、虫取り網を担いでいざ森へ。でもなかなか会えません。「おーい、おばけー でてきてよ!」

『むしホテルの おばけさわぎ』

4歳から6歳向け

文/きねかわ いつか
絵/近藤薫美子
BL出版

『ねずみくんとおばけ』

異年齢

文/なかえよしを
絵/上野紀子
ポプラ社

シーツを被ったねずみくん。みんなを驚かそうとしますが、すぐにばれてしまいます。子どもたちの大好きな、ねずみくんとおばけは最強の組み合わせ。参加型で楽しめます。

『オバケカレー』

異年齢

作・絵/Goma
フレーベル館

買い物帰りのきつねが森を通ると、おばけたちが楽しそうに野菜スープを作っています。きつねはおばけに変身して仲間に加わりました。ところが、途中でばれて、さあ大変! 裏表紙の楽譜どおりに歌いながら読んでも楽しい「へんてこパンやさん」シリーズの1冊。

『新 幼児と保育』2019年8/9月号より

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