異年齢クラスでの遊びの広がり~ハンバーガー屋さんのごっこ遊び~【保育を見ること、語り合うこと #2】

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保育を見ること、語り合うこと
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ノートルダム清心女子大学准教授

伊藤美保子

ノートルダム清心女子大学教授

西隆太朗

子どもたちが生き生きと遊び、生活する保育の場では、訪れるたび、心動かされる場面に出会います。そんな保育の場面から、語り合うこと、考えさせられることは数多くあります。

3・4・5歳児の異年齢クラスでの遊びの場面を見ながら、ノートルダム清心女子大学で教鞭をとる西隆太朗先生と、伊藤美保子先生が語り合う様子をお届けします。

お話を伺ったのは…

西 隆太朗 先生

ノートルダム清心女子大学教授。保育における関係性の意義について、子どもたちとかかわりながら、保育学的・臨床心理学的研究を進めている。著書『子どもと出会う保育学――思想と実践の融合をめざして』(ミネルヴァ書房)ほか。

伊藤美保子 先生

ノートルダム清心女子大学准教授。保育士を長年務め、子どもたちの姿に惹きつけられて、保育の観察研究を続けている。共著『写真で描く乳児保育の実践――子どもの世界を見つめて』(ミネルヴァ書房)ほか。

遊びが始まったころ

場面1 ハンバーガーはいかが?

ある日の自由遊びの時間。子どもたちは、ブロックを組み合わせたおうちごっこや、動物の絵を描く制作など、それぞれが思い思いに遊んでいます。今日のクラスには、ハンバーガー屋さんに使えそうな材料が増えていました。3歳児たちも、食材に少しずつ触れて試しているようです。Aちゃん(5歳児)が店員さんとなって、Bくん(4歳児)の注文を聞いています。

さっそく厨房で、5歳児同士協力し合いながら、調理が始まりました。

厨房にはたくさんの素材が用意されています。

青いドリンクには、手書きで「ブルーハワイ」と書かれていました。Cくん(5歳児)は、トングを扱う技も手慣れたものです。

準備が整い、お店も繁盛してきました。

5歳児たちはレジのところに、「人がいないときはこれを押してください」とベルを置いていました。

保育を見て語り合う

伊藤 店員さんの5歳児たちは、特に役割分担を相談したわけでもないのに、さっと状況を把握して自分の持ち場に回り、ポテトを揚げたり、お客さんが待っていたらレジに入ったり、自然とお店を切り盛りしていました。今必要なことは何かを自分たちで考えて、そのことを楽しめるのは、すごい力だと思います。レジのところにベルを置くのも、5歳児が自分たちで考えていました。
子どもたちの店員さんは堂に入っていて、トングのさばき方ひとつとっても、ちょっと大人がやってみるより真に迫っているくらいです。もう材料が切れてしまったら「すみません、ブルーハワイはもうないんです」だとか、イートインの注文だったら「中で食べる方は手を消毒してくださいね」など、その場に合った応対がすんなりできています。今の時代に起こっていることは何でも、子どもたちは遊びの中に取り入れていきますね。
実生活でもお店を訪れたこともあると思いますが、お客としての立場から見てきただけで、こんな臨機応変な対応ができるのかと驚かされます。

西 Bくんは、手にした札束を「こんなにもらった」と私に見せてくれたのですが、「これ、現実だったらすごいよなあ」といってにっこりしていました。ものを想像力で膨らましてみたり、急に現実との違いを言ってみたり……子どもは現実と想像の間にさまざまな次元があることを知っていて、その違いを行き来しながら楽しんでいるんだなあと思いました。

遊びの広がり

場面2 みんながつながって

2週間後に再び園を訪れると、ハンバーガー屋さんはさらに発展していました。自由遊びの時間なので手紙を書いたり、人形のお世話をしたりなど、ほかの遊びも広がっていて、今日のハンバーガー屋さんのメンバーも前回とは少し違っています。3歳児のDちゃんも、堂々とメニューを見せてくれました。

先生が紙粘土と絵の具を持ってくると、3・4・5歳児が集まって、ナゲットを作り始めます。

今日の遊びでは、5歳児同士も相談しながら作っていますが……

3歳児たちも自分からお店のスタッフになって、いろんなものを調理していました(この下の写真2枚とも写っているのは3歳児)。

別の場所でおうちごっこをしていたEちゃん(4歳児)が人形の世話をしながら、ハンバーガー店スタッフのCくん(5歳児)に電話をかけています。

配達を頼んでいたようです。
Eちゃんはあとで友達や人形たちと一緒に、おいしそうに食べていました。

保育を見て語り合う

伊藤 前回は5歳児の子どもたちがお店の中心となって、3・4歳の子どもたちはお客さんになることが多かったのですが、今日はみんなが作る側にも、食べる側にもなっていました。異年齢クラスの中で、5歳児が作り出したイメージや遊び方が、3・4歳児にも広がっていく様子を見ることができます。ナゲットはどの年齢の子どもも自分なりに参加できる遊びで、やり始めた子はすごく集中して取り組んでいました。
ポテトの入れ物も、お店でくれた本物を活用したものもあれば、子どもたちが厚紙で作ったものもあります。こうしたごっこ遊びでは、本物があることも楽しいし、子どもたち自身が考えるのもまた楽しいものです。どの程度子どもが作るのか、またどの程度保育者が提供するのか、子どもも考えるし、保育者も考えています。保育は子どもと保育者が一緒に作り上げるものだということはよくいわれますが、それがうまくいっている様子を見ることができました。

西 大きな子のしていることを、小さい子どもたちもよく見ていて、触発されているんですね。写真に写っていた3歳児の調理スタッフたちは、随分てきぱきと、協力しながら進めていました。黄色いストローを切ったものですが、フライドポテトの雰囲気がよく出ていました。

伊藤 異年齢クラスでの遊びでは、3歳児なら3歳児、5歳児なら5歳児と、どの年齢の子どもたちも自分らしく参加して遊べるような素材、遊具、環境と保育者の配慮が必要ですね。

西 電話で注文していたEちゃんは、女の子同士おうちごっこで遊んでいて、たくさんの人形のお世話をしたり、おしゃれして出かけては帰ってきたりしていました。そんな中で、何かいいことを思いついたという笑顔で、電話をかけ始めたんです。予約じゃなくって配達の注文なんだということまで伝えていました。

伊藤 自分たちの遊びに熱中しているのに、ほかの子の遊びの様子もよく感じ取っているんですね。

西 電話線もないのに、違う空間の遊びがすんなりとつながっています。いつもクラスの中に心通じ合う関係があるから、こんなことができるんだと思います。
保育を「コーナー」でとらえることがありますが、子どもたちの遊びはそれだけにとどまっているわけではなくて、大人が思う以上につながりあっているんでしょうね。
そういうつながりの豊かさは、子どもたち自身の心が自由に動いていることで生まれてきます。大人が遊び方や順番などを決めてしまっていれば、こうした展開にはならなかったでしょう。3歳児が自ら店員となって調理するのも、はじめから計画するというよりは、自分から自由に動いて楽しむことができる環境と雰囲気があるからこそできることです。
自由な遊びの世界を尊重し、一人ひとりどんな楽しみ方をしているか見ていくとき、その子の個性や今伸びようとしている力、子どもたちの想像性の豊かさを、さまざまに発見していくことができるでしょう。

撮影/伊藤美保子
協力/社会福祉法人倉敷福祉事業会 連島東保育園(岡山・倉敷市)

『新 幼児と保育』2021年6/7月号より

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